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ラ「うっわぁ、びしょ濡れ。
ひどい雨だね！」
「この島では時折降るの。多分、すぐ止むと思う、け、ど」
物置程度の狭い納屋の中で
ずぶ濡れでシャツの中の肌が透けてるラウール君と
濡れきったビキニの私が
向かい合っていることの重大さに、今気づいた。
ラ「ん？どうした？」
「いや、その……私、制服に着替えようかな。
だから、」
「あっち向いてて？」と言おうと背中を向けた背後に
彼の、体温を感じた。
ラ「……ひとりで、脱げる？」
耳元を掠める甘い声
「そんな、」
できない訳が、ないのに
お腹の奥が痺れる
ラ「Aさんってさ、」
今、名前を呼ばないで
ラ「本当は、すっごくやらしい子でしょ」
間近で囁かれた言葉の破壊力に、身体が動かなくなる。
それに気づいたのか、
ラウール君の指がまた、ビキニの紐をなぞる。
ラ「だけど、きっと誰にもバレないようにしてて
でも、誰かに気づいてほしくて」
肩、胸、横腹、と撫でた指先がお腹に回る。
ラ「本当は、今、すっごく興奮してるんだよね」
脚がガクガクする。
こんな興奮を味わったことがなくて
脳がどう処理をしたらいいか追いつかない。
ただ、
この手を拒むことはできないことを
きっと私は理解してる。
ラ「だから、……僕が脱がせてあげよっか？」
この快楽の実を食べてしまえば
きっと、あと戻りはできなくなる。
きっと、私は後悔する。
きっと、
きっと、
きっと、
脳は警告を鳴らすのに、私の手はその果実に伸びていて。
「……脱がせて、ラウール君」
だから、私は、この温い楽園から追放される。
・
・
ピッポン ピッポン
ガタンガタン ガタンガタン
今でも、後悔してることがある。
私は、禁断の果実の味を知ってしまった。
世の中には、知らない方がよかったこともあると
あの時の私はまだ知らなかった。
都会に出てきたとて、あの島は私にとっては退屈なところで
今もそれなりに愉しんではいる。
それでも、
『あ、A。こっち！』
「おまたせー！遅くなった！」
時折、あの島の
ただ綺麗なだけの
5mのビーチのことを思い出すことがある。
-Fin.
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作者名：さくまり
| 作成日時：2022年10月4日 17時
