オリフィスの隙間【Ⅸs Short Stories】 (ページ4)

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重たい雲が落ちてきそうな空だった。

半日しかない日のくせに、2限に体育を入れる時間割について

もう少し考えはなかったのかと隔週思う。

湿度が高く、ぬわっとする体育館で

人数もいないからと男女合わせてバレーをするのにも

田舎ならではの気遣いがあって

『はぁい、私ユウ君と一緒がいー！』

先「カップルごとは他所でやれ」

『先生ケチー！』

冷静に考えて

付き合ってる上の言動や男女の関係を

一応小さい頃から知っている相手として見るには無理がある。

堂々と目の前で腕を組んでるのに、

陰では裸であられもないことをしてるんなら

それは、どういう目で捉えればいいのだろう

そんな考え事をしながら、目の前のカップルを眺めていたら

ラ「Aさん、」

視界を遮るように、綺麗な金髪が流れた。

ラ「次、俺とラリーだって」

「あ、うん」

ラ「何か考え事？」

「いや、……邪なコトだよ」

ラ「へぇ、Aさんもソウイウ事考えるんだ？」

「え、」

大きい瞳を思わず見つめたら、

ふふ、と薄く口角をあげて彼が口元を覆う。

ラ「邪なコト、考えちゃったんでしょ？」

あ、彼には私が何を考えてたか分かったみたいだ

邪な、なんて言葉の意図をこの学校で理解できる

学生なんていないと思っていたから

バレてしまった恥ずかしさと

お互いにしか共有できない言語の優越感に

思わず笑みが零れる。

初めての時に似た、高揚感だった。

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零れそうだった雲は少しだけ軽くなって

学校を出る頃には

制服に纏わりつく湿気が肌にぴたりとくっついていた。

「これなら、泳げるかな……」

ここ数日の雨模様のせいで

溜まった気持ちを発散したくてしたくて堪らなくて

つい、スクールバッグの下に隠した“秘密”に

内心、ワクワクしながら自転車のペダルを踏みこむ。

島の海岸線沿いを家よりずっと奥に、

徐々に対向車もいなくなって

建物すら周りにない道路の脇の茂みに自転車を隠して

獣道を駆け降りた。

5mのプライベートビーチは

ほどよく波が引いて、曇りだというのに波も穏やかだ。

「……よし、」

逸る気持ちを焦らして制服に手をかける。

人知れず整理した納屋の中ですべてを脱ぎ捨て

ビキニに着替えたら、

興奮で思わず、熱い溜息が零れた。