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……、ガチャ
「……珍しいね、サプライズだなんて」
とても慎重に選んだ言葉に、君は事も無げに笑ってみせる。
蓮「たまにはいいでしょ」
「こんな日に？」
蓮「Aさん、クリスマス興味ないって言ってなかったっけ？」
「……そうだったね、」
目元を隠すように髪の毛を掻きあげたら
「寒いから早くいれてよ」ってさも当然のように入ってこようとするから
「え、ちょ、ちょっと、」
蓮「ん？」
「いや、その、……あがるの？」
蓮「え？あ、部屋あんま綺麗じゃない？」
「あ、いや、そうじゃなくて」
蓮「ならいいじゃん。
俺、Aさんの部屋散らかってても気にしないし」
「いや、だから、そうじゃなくて、」
蓮「何だよ(笑)
ねぇ寒いからはやく、」
「え、その、」
蓮「なに(笑)」
「……予定、とかないの？」
そう聞いたのは、少しだけ
少しだけ、この後の返事を期待したからかもしれない
蓮「え？
言ったじゃん、クリスマスは会いたいって」
あっけらかんと
大学生活最後のクリスマスを不意にしてしまおうとしてる
君の言い草は
本当にズルくて、
「なんで……、私なの、」
つい、口から零れた。
蓮「だからずっと俺、言ってんじゃん。
Aさんのこと好きだって」
あぁ、もしかしたらずっと
私は、君の手のひらの上で大人ぶって“みえた”だけなのかもしれない
だって、そうでしょう？
こんな、みっともなく泣きそうなところを見ておいて
蓮「ね、Aさん。
好きだよ」
そんな追い打ちをかけてくるんだから。
「……、何なんだよ、もう」
蓮「ふはっ、Aさんのそんな声初めて聞いた(笑)」
「何にも変わらないから。
風邪ひかれても困るから早く上がって」
蓮「はいはい」
すっかり冷え切った玄関で
大きな身体が靴を脱ぐ。
その左手にケーキの箱が見えた。
「何買ってきたの？」
蓮「え、りんごパイ」
「……クリスマスと言えばブッシュ・ド・ノエルでしょうよ」
蓮「え、何それ」
「いや、何でもないよ」
蓮「そ？Aさんが好きそうだったからこれにしたのに」
「……ズルいなぁ」
‐Fin.
続く
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作者名：さくまり
| 作成日時：2022年10月4日 17時
