オリフィスの隙間【Ⅸs Short Stories】 (ページ1)

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『午後0時　楽園追放』～Raul～ページ1

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『ラウールって呼んでください、よろしくお願いします』

10人しかいない同級生が空前絶後の大盛り上がりの中

私は、

ただ阿呆みたいに口を開けてキミを見ていることしかできなかった。

遺伝なんだと説明された金髪

東京から来たという雑誌のモデルみたいなスッと伸びた身長

きちんと着ているはずなのにどこかお洒落に見える制服姿

すべてが

今まで出会った誰とも違う

初めて、宇宙人(エイリアン)に会った時って

そう、きっと

こんな気分に違いない

なんて1人で思ってた。

先生が出て行ってすぐ、同級生たちに机を囲まれて

『え、東京ってどこら辺！？』

『スカイツリーってお家から見える？』

『芸能人会ったことある！？』

『ねぇねぇハーフって英語話せるの？』

『東京って頭いいんだよな！』

あぁあぁ、田舎丸出し

聞いてる方が恥ずかしいくらいの低レベルな質問の嵐に

ひとつひとつ、丁寧に

でも必要最低限に話すラウール君。

きっと、面倒なんだろうな

転校、慣れてる感じするし

そんな彼の様子に気づく気配もなく

また、低レベルな質問を飛ばす同級生たちに

「可哀想に」と心の中で同情して

窓の外に広がる、ただ綺麗な海を眺めた。

・

此処は、何にもない島だ。

「何にもないけどいい島だ」なんて大人達は言うけれど

それは、何にもないことへの負け惜しみだと私は思う。

人がいい、面倒な田舎付き合いが多いだけ。

自然がいい、文明化を諦めただけ。

きっと都会に行ってみたら、

「何にもないいい島」なんて、すぐに

「何にもない退屈な島」にすげ替わるに違いない

小さい頃から、漠然とそう思ってた。

知らない大人から「Aちゃん、今帰り？」とか

返事の仕方が分からない声をかけられるのも

自動車以外の移動手段がないことも

この島の全部が、私にとっては窮屈で仕方がなかった。

だから、

突然現れたラウール君も、いつか私の中で退屈の一部になる。

それでも、できるだけ長く

彼には退屈にならないでほしい

そう思った瞬間から、きっと私は彼に興味があったんだろう

『ねぇAはなんかねーの？』

「いやぁ……、勉強分からないことがあったら言ってね」

『おいぃ、俺らよりぜってぇ頭いいって！東京だろぉ！』

「はは、そうかもね」

ラ「……」