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太宰side
「やあ。元気にやってるかい?」
「!」
私が声をかけると少し動揺したのが見えた。それでも私達はそれを他所にずかずかと進んでいく。【敵拠点】にも関わらず。
「だ、太宰さん、大丈夫なんですか?」
「どうせ何も云われないさ。首領のことだからね」
「それは良いがさっきから視線が痛いぞ」
慣れだよ慣れ、と軽く流す。
平然と【ポートマフィア】の廊下を歩く。私は自分の目から光が消えているのに気が付かなかった。
私の脳裏にはかつての友人の言葉がこだましていた。
【佳い人間になれ】
私は大嫌いな奴に手を貸すようになったんだ、織田作。あの頃とは違うよ。たとえ過去を清算する事は出来なくとも、未来を変えることは出来る。
向かう場所は勿論中也の執務室だ。
・
中也side
再び最上階の今Aの居る部屋に行った。気づけば眠っていたようで、可愛い寝顔ですやすやと寝息を立てている。襲いてぇな。
「絶対に記憶を戻してやるからな。安心して寝てろ」
すっと軽く頭を撫で、静かにそう告げて俺はまた執務室に戻った。
・
執務室に戻る途中、目の前の廊下を歩く珍しい人影を見た。次第にそれは近付いてきて、よく見てみると…。
「はァ!?太宰!?」
「やぁ中也!今日もちっさいね!」
「うるっせぇ!社会不適合者が何云ってんだ!」
太宰だった。しかも探偵社の奴らを連れてる。一体どういうつもりだ?
「梶井くんは?」
「ああ、此処だ」
地図の中の一点を示す。ここに来た理由はそれか。記憶を消す薬について、だな。
俺も何も無いことを信じて動いているが、万が一Aの様な状況になってしまったら困る。
「待て、俺も行く」
「はいはい」
きっとそう云うと判っていたのだろう、適当に太宰は返事をする。そしてそのまま梶井の実験室に踏み込んだ。
「中也さーん!さっきぶりですね!とあれ、探偵社の…」
「梶井くんに聞きたいことがあってね」
「なんでしょう?」
「長谷川泰子に幾ら積まれた」
「確か四百万はあった気が…」
いきなり核心をつく。今は前置きなんざ必要ねぇくらい緊急案件だからな。太宰の口調もあの頃に戻ったみてぇだ。
「ふぅん。解く薬は?」
「今作ってますよ。意外と早く出来そうです」
「本当か、梶井」
「ええ。楽しくなってきました」
それなら俺達は…。その時太宰と目が合った。判ってるだろ、とでも云いたげに。ああ、判ってるさ。
「長谷川泰子を探しに行くぞ」
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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2018年11月12日 20時