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中也side
「A…」
『…名前呼んで貰えた。へへ』
恥ずかしそうにぽつりと呟くAがそこにいた。それは俺の知っている何時ものAでは無く、出会った頃と同じAだった。
流石梶井の薬、と思う事も出来るだろう。しかし俺達にとっては記憶を無くしたAを見ていて辛くなるだけだ。
つい俺は首領の方を向いてしまった。
「少し待っていてくれ給え」
俺を気遣ってかそう告げて後ろを向いた。Aに聞こえぬような小さな声で話す。
「もしかしなくても、あれは…」
「はい。梶井に確認したら記憶を消す薬品でした」
「これは、困ったねえ…」
流石の首領もこれはこたえたようだ。いつになく悲しい表情をしている。堪えていた感情が出そうになって、必死に抑える。
「ですが、梶井がこれを」
「直ぐに調べさせよう」
それから首領はAにここで休むように伝えて俺と部屋を出た。
その後に伝えられたのは。
「中也君。何としてでもA君を元に戻し給え。そして犯人を───────始末しろ」
「はい」
一礼して退室する。直接は云わ無かったが、これは首領命令。
絶対に彼奴を──────────────殺す。
・
太宰side
「見つけた。敦くん、国木田くん、谷崎くん」
「何だ太宰」
「どうかしたんですか?」
「何か見つけたんですか?」
私が声をかけると直ぐに集まる。流石だねぇ。
そして皆に見えるように画面を動かした。
「犯人を見つけた。この女性さ」
「この、人がですか…!?」
「綺麗なのに勿体無いよねぇ。ま、やるしかないけれど」
「依頼は依頼だ。しっかりやれ」
横浜の監視カメラの映像を中也に近い場所から見ていく。盗撮やストーキングをするにも相手が見えないと出来ない。
「でもおかしいのだよ」
「何がですか?」
「顔も隠さないし人から隠れようとしないし堂々とストーカーしてる。まるで、【やったことがある】みたいに」
「やったことあって堂々とするンですか…?」
「コソコソする方が怪しいからね」
再び映像を動かす。すると興味深い事を見つけた。
「彼女、ポートマフィアに向かって歩いてるね」
「ポートマフィア!?」
「何か用事が…?」
考え始めた途端、電話が忙しく鳴り始めた。その音で思考を中断した。
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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2018年11月12日 20時