line 49 ページ16
中也side
「ほ、へ、ひっ……!」
何だコイツ。俺らを見るなり机の下に蹲って隠れ始めた。…隠れられてねぇけどな。
「え?」
「これでも一応は敵だ。警戒しとけ」
「中也、その必要は無いよ」
「あ?」
ニヤリ、と相変わらず嫌味ったらしい笑みを俺に向けた。
「ねぇ、そこの君」
「…」
「萩原朔太郎って云うんだったねえ」
「…」
「君の異能のせいで大切な子が何処かへ行ってしまったのだけど…心当たりは?」
「…」
はたから見たら変な光景だ。ただ優しく話しかけているだけに見えるだろう。だが相棒だった俺には判った。彼奴がとんでもねェ威圧と光の無い恐ろしい瞳で奴を睨んでいる事を。現役のマフィアより怖ぇだろ、何て考え始めてしまう。
「ふぅん。何も喋らないの。じゃあ」
当たり前の様な口調と流れるような動作で太宰が懐から取り出したのは、ナイフだった。
よく見ると俺のじゃねぇか!またスられたか…糞。
そしてそのナイフを喉元に突きつけた。
「君を殺してしまおう」
「や、やめてくれないかっ…」
「命乞い?」
「っ、心当たりなら、ある…っ」
「嗚呼そう!じゃあ話してもらおう!」
恐ろしい奴だ。マフィア時代に戻ったかのように黒いオーラをさっきまで振りまいておきながら突然態度を変える。気持ち悪ぃな。
「中也達も良く聞き給えよ」
「少女を一人と指名手配犯を…異能で別の世界に…」
「ビンゴだな」
「そ、それより君らは誰なのだ!?」
「武装探偵社の調査員とポートマフィアの幹部、そしてその指名手配犯の部下だよ」
太宰がそう云うとさらに顔が青ざめていく。何を敵に回したかようやく良く判ったらしい。
「ぼ、僕はただ自分の異能で実験をしていたのだ…」
「それがマフィアと探偵社の一人を敵に回してンだよ莫迦」
「取り敢えず、少女と指名手配犯をこっちの世界に戻してくれる?」
「わ、判った…
異能力【蝶を夢む】…」
蝶が飛び立ち、この部屋の扉にとまった。
「その扉を開ければ…向こうの世界だ…」
「Aっ…!芥川!」
急いで扉を開いたその先は、知らない家の玄関だった。
「!…中也さん!」
「…芥川っ!Aは!?」
「寝ている。今起こしに行きます故」
芥川は安堵の表情を少しだけ見せたあと、Aを起こしに走っていった。
67人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2018年11月12日 20時