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車内では、山田の投げかける他愛もない話に相槌を打ったり、山田が口ずさむ鼻歌に改めて彼の美声を実感したり、そうこうしているうちに目的地に着いたようだった。
余計な事で頭を悶々とさせていた所為で街の看板も何も見ていなかったから、どの辺りに連れて来られたのかも把握していない。
ただ掛かった時間的に、ここは都内近郊なのだろうということだけ。
最初は静かな高級住宅街かと思いきや、それらの家の窓からはマネキンやハンガーにかけられた洋服が並んでいるのがわかるし、よくよく見てみるとドアにはOPENの文字の看板。
洋服屋であることは容易に想像がついた。
「俺のいきつけなんだよ。因みにメンバーの誰かをここに連れてくるのは初めてね」
伊野尾ちゃん気に入ってくれるかなと微笑む山田に、自分でも呆れるほど単純だと思うがさっきまでナイーブになっていた気持ちも吹き飛んで、多分顔も少し赤らめてしまっていたと思う。
車で来たこともあり、俺達は変装も何もしていないのだけれど、店に入れば驚くことなく店員さんが山田に「いらっしゃいませ」と微笑みかけた。
山田はいつもそのままの姿で足を運んでいるのだろうか。
「新作が入ったんですよ」
「わあ、かわいい。でも今日はね、この人の服を選びに来たんですよ」
初耳のその言葉に俺は山田を振り返ると、彼はドッキリの種明かしをするかのように楽しそうな顔をする。
「そう。俺、伊野尾ちゃんと洋服見に来たことないし、どーせなら俺が選んであげたいなって」
「え……」
俺の事を考えてくれていたとは知らず、「仲良しですね」と笑う店員さんの声が耳に入ってこないくらいには、俺はドキドキしていた。
その後は、まるで着せ替え人形の様に色々な服を試着して、結局オールコーディネートをされた。
俺も気に入ったのもあるけど、せっかく山田が選んでくれたというこの特別感から俺は全てを買う決意をしてレジへ向かえば、山田が横からスムーズに支払いを済ませてしまう。
「はい、プレゼント」
突然の王子様モード全開な彼に、俺は自身の財布を握り締めながら慌てふためくが、山田が決意した事を曲げないことは充分メンバーとして見てきた中でわかっているので結局折れたのは俺。
…山田からのプレゼント。
こんな特別な服、いつ着ればいいんだろうなんてカジュアルめな服に反してそんなことを考えて、俺は店員さんから受け取った紙袋を両手で抱き締めた。
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あんこ(プロフ) - なっちさん» なっちさんコメントありがとうございます!すごく、そう言って頂けると私も胸がきゅってなります嬉しいです(´;ω;`)少し悲しいお話ですが、きっと2人にとって大切な時間だったと思います...。 (2018年12月31日 12時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
なっち - 胸がぎゅっと痛くなりました。涙が出ます(泣) (2018年12月30日 2時) (レス) id: a01bbaa610 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - kei622kazumi121さん» ご感想ありがとうございます(´;ω;`)悲恋ですが、この山田さんと伊野尾さんは自分の決断に悔いなく前を向いて進んでいくかと思います……!今のところ続きは皆様の脳内におまかせするつもりですが、何かきっかけがあれば是非〜! (2018年2月2日 13時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
kei622kazumi121(プロフ) - 完結お疲れ様です。この作品を読んですごく泣いてしまいました。やまいのはベタベタ系をたくさん読んでいたのでこの結末は予想していませんでした。悲恋は泣けます……このお話の続編があればうれしいです。…… (2018年2月1日 23時) (レス) id: 04bc14a5ea (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - りこさん» りこさんはじめまして!コメントありがとうございます〜!そしてご感想まで(´;ω;`)そう言っていだだけると凄く嬉しいです!全く違うように見えるけどどこか似ている、そんなやまいのでした。他の作品でも引き続き応援頂けますと嬉しいです! (2018年1月26日 9時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんこ | 作成日時:2017年12月19日 14時