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いのちゃんが涼介を好きな事には薄々勘づいていた。
やめといた方がいい、そう言ってあげるのが優しさだったのだろうか。
こうなってしまった今、それが後悔という形になって僕を襲う。

でも、もしかしたら、もう涼介は変わったかもしれないと思って、僕はいのちゃんに何も言わなかった。
いやそれは期待というよりも、変わっていて欲しいという僕の勝手な願いだったのかもしれない。







本日の撮影に遅れてきた涼介は、みんなが帰った撮影後もスタッフさんへ遅刻の謝罪回りをしていた。
僕は意図的にゆっくり身支度をして、楽屋の前で君の帰りを待つ。

暫くすると誰もいない楽屋のドアが開けられると、現れた涼介と目が合って、「まだ帰ってなかったんだ」と驚く涼介の声に無言で頷く。
それ以上の会話はなくて、そのまま君は身支度を始めたので、その後ろ姿をそっと憐れんだ目で見つめてみた。

涼介は、まだ何も変わらないんだね、って思いを込めて。






「今日遅れたこと、怒ってんの?」






いつもと違う空気を察したのか、涼介は何とも的外れなことを口にしたので僕は唇を噛み締めると、そのまま涼介の背中に向かって僕の想いを伝える。







「……いのちゃん、可哀想だと思わないの」


「なに?」







はぐらかしているのか、それとも本当に何も思っていないのか。
彼の表情からは何も読み取れない。
それが悲しくて、僕は怒りを殺すように拳を握りしめるが、こんな事をしたって彼が変わらないのは身を持って知っているので非力な自分が悔しくなった。







「いのちゃんは、本当に涼介の事が好きなのに、」




「知ってるよ」




「いのちゃん、今日泣きそうな顔してたんだよ。だっていのちゃ……」







ねえ、と僕の言葉を涼介が遮る。
振り返った涼介は、僕と目が合うと困ったように笑った。









「いのちゃんいのちゃんってさぁ……、そんなに伊野尾ちゃんが良いなら、知念に伊野尾ちゃん貸してあげよっか?」









「……ふざけた事言わないでよ、」








そういう事じゃない、そういう話じゃない、
なんで涼介には伝わらないのか。








「ねえ、涼介、いい加減に……!」







勢いで涼介に歩み寄ると、その腕を力強く掴んだ。






あまり怒らない僕だけど、この時ばかりは頭の中で我慢の糸がぷつりと切れる音がした。





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あんこ(プロフ) - なっちさん» なっちさんコメントありがとうございます!すごく、そう言って頂けると私も胸がきゅってなります嬉しいです(´;ω;`)少し悲しいお話ですが、きっと2人にとって大切な時間だったと思います...。 (2018年12月31日 12時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
なっち - 胸がぎゅっと痛くなりました。涙が出ます(泣) (2018年12月30日 2時) (レス) id: a01bbaa610 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - kei622kazumi121さん» ご感想ありがとうございます(´;ω;`)悲恋ですが、この山田さんと伊野尾さんは自分の決断に悔いなく前を向いて進んでいくかと思います……!今のところ続きは皆様の脳内におまかせするつもりですが、何かきっかけがあれば是非〜! (2018年2月2日 13時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
kei622kazumi121(プロフ) - 完結お疲れ様です。この作品を読んですごく泣いてしまいました。やまいのはベタベタ系をたくさん読んでいたのでこの結末は予想していませんでした。悲恋は泣けます……このお話の続編があればうれしいです。…… (2018年2月1日 23時) (レス) id: 04bc14a5ea (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - りこさん» りこさんはじめまして!コメントありがとうございます〜!そしてご感想まで(´;ω;`)そう言っていだだけると凄く嬉しいです!全く違うように見えるけどどこか似ている、そんなやまいのでした。他の作品でも引き続き応援頂けますと嬉しいです! (2018年1月26日 9時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんこ | 作成日時:2017年12月19日 14時

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