深紅のゼラニウム ym×in

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好き―








身体中に上手く酸素が回らなくて、くらくらする。

震える2本の腕で、今にもソファから崩れ落ちてしまいそうな身体をしっかり支える。




今更ながらに、逃げ出したい気持ちに襲われた。
だけど、そんなことは許されるはずもない。






数分前の俺は、山田に好きだと気持ちを伝えた。






彼に恋愛感情を持っていることに気づき、もやもやする毎日を過ごしていた。
特に山田は、楽屋でもいつでも知念との距離が必要以上に近いことが多くて、つい知念本人に恥ずかしげもなく「2人は付き合ってるの？」と聞いてしまった程だ。(結局、付き合ってはいなかった)


付き合えなくたって良い。

だけど、俺の気持ちを彼に知ってほしいという思いで、俺はこの日、彼を店へ呼び出した。









しかし口にしてみれば、やっぱり言わなきゃ良かったかなという後悔に襲われる。

その理由というのは、目の前に座る告白を受けた山田本人が不適な笑みを浮かべたまま何も答えてくれないからだ。








「あの、や、やまださん……」








き、気まずい･･･



カラン、と店員さんが置いていったお水の氷が溶けて音を立てる。
まるでそれが１つの合図のように、山田が口を切った。





「いいよ」




「……ふぇ？」









「俺と付き合いたいんでしょ？いいよ？」









本当に、山田と進展したいとかそんな気持ちはなかったからつい気の抜けた声を出してしまう。
するとその様子を見た山田は小馬鹿にするように笑うが、俺の思考は止まったままだ。
素直に喜べないのは、人が付き合うという上で必要とされる気持ちを、彼の口から聞いていないからだろうか。






付き合う？

じゃあ山田は？山田の気持ちはどうなの？

俺のこと、どう思ってるの？






いろいろな疑問が頭を巡る。



しかし有無を言わさず、次の瞬間には山田が俺の手を握って「じゃあこれからよろしくね」と微笑んできたために脳内が停止してしまい、何も確認することは出来なかった。








そしてこの日から、

この選択肢を選んだことで俺の未来は動き始めた。









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