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「じゃあね」
「うん」
パタンと俺の背中で閉まるドア。
1日の始まりを何度この部屋から始めただろう。
それはもう片手では収まらないほどの数になってしまった。
山田の家に泊まるのは必ずメンバーでの仕事の後。
仕事が終わる時に「今日は」と山田に声を掛けられるのが習慣になった。
それに大抵俺は「いいよ」と答え、別々の車で彼の家に向かう。
別に女でもないんだから何も気にすることなく一緒に向かえばいいのだけれど。
俺の自由を持っている裕翔が俺達の関係に気づいて山田に被害が及ぶ事を恐れたから、結果、密会のようになった。
だからと言って、正直裕翔があの日以来俺に何かをしてきたわけではない。
でも裕翔と顔を合わせた際の動揺は未だに治まらなくて。
俺もその震えを落ち着かせる為に、裕翔と会ったその後は山田と身体を重ね、あの日の記憶をかき消すようにまた上書きをした。
枯れてしまった心をまた潤してくれるのは
今の俺には山田しかいなかった。
これも一種の依存なのだろうか。
俺に山田への特別な感情はないけれど、今の俺は、山田無しでは生きていけない様な気がしていた。
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「伊野尾ちゃん」
「なに」
事後、山田が俺の頭を撫でながら何かを言いた気に口を開く。
この様な事は何度もあった。
けれど、その先を山田が口にしたことはない。
未だに避け続けている裕翔のことだろうか。
それともこの関係性への後悔か。
山田が考えていることをいくつか推測する。
でも、山田が言わないのであれば俺も考えるのを止めようと思った。
思い出したくもない裕翔の事を彼に話すつもりは無いし、この関係を終わりにしようと言われたら今の俺はなくなってしまう。
どちらにしても続きを聞くことは恐怖でしかなかったから。
「なんでもない」
ほらね。また言わない。
その代わりに彼の唇が落ちてくる。
これもいつもの流れだった。
部屋の電気は消されているため、山田の表情はあまり読み取れない。
(俺を捨てないで)
俺も次いで彼の首にゆっくり腕を回すと、山田の唇にその続きを言うなと口封じをするかの様に自らの唇を押し付けた。
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あんこ(プロフ) - 時雨さん» 初めまして!コメントありがとうございます(´;ω;`)そして凄く嬉しいお言葉も……、ありがとうございます!!もうほんと私の性癖(?)でまくりの作品でしたが楽しんで頂けたのならとても嬉しいです!!引き続きよろしくお願い致しますー! (2017年11月16日 8時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。完結おめでとうございます! お疲れ様でした。あんこさんの文体というか、表現の仕方が私的どストライクで、この作品ほんとに大好きです!! 三人の設定もほんとに好きでした……素敵な作品をありがとうございました! (2017年11月14日 0時) (レス) id: dcd1a2d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - ノアさん» コメントありがとうございます(´;ω;`)もっとドキドキして貰えるような展開でいけるよう頑張りますので引き続きよろしくお願い致します!楽しみにして頂けて嬉しい限りです! (2017年10月23日 19時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。まさかの展開にドキドキしてますよ(^ω^)山田さんはどうなるのかな?とか楽しみに待ってます! (2017年10月23日 13時) (レス) id: ec3abc1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 泡雪さん» コメントありがとうございます(´;ω;`)他作品も読んで頂けたとは、大変嬉しいです!!応援のお言葉ありがとうございます!流れを止めないように頑張りますので引き続きよろしくお願い致します! (2017年10月21日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんこ | 作成日時:2017年10月7日 0時