検索窓
今日:11 hit、昨日:9 hit、合計:213,045 hit

45 in ページ45

.



よく考えたら、最近の裕翔は俺を抱いてくれることはなくなっていた。
それには気づいていたのに。
もうそれは裕翔の気持ちが変化した大きな合図だったのに。
俺は呑気に考えていたものだから、こうやって全て失ってしまった。

心が押し潰されそうになっているところで裕翔が消えていったその扉が控え目に開かれていくのがわかるが、先程の状況からして裕翔が戻って来てくれたという期待も持てるはずもなく、俺は顔を上げることもしない。


「……伊野尾ちゃん、」


つもりだったのに、その主が山田だとわかると俺はバッと勢いよく顔を上げる
山田はドアの隙間から顔を覗かせ、俺が一人だとわかるとゆっくりそのまま俺の元へとやってきた。
なんで山田が、と言おうと思ったが、そういえばさっき裕翔に引っ張られている時に目が合ったんだっけなんて思い出す。
きっと、何かあったのかと相変わらずのお節介焼いてくれたのかなって。
そんなことを考えていると、山田は俺の顔をしっかりと見つめたまま歩み寄りそのまま急に俺を抱き寄せた。



「……伊野尾ちゃん、ごめん」


「っな、なに?」



慌てる俺を抱きしめる腕に力が込められるのがわかる。









「裕翔の事。全部聞いた。伊野尾ちゃんが辛い思いしてたのに、何も知らず、本当に、ごめん……っ」






予想外の言葉に俺は動きを止める。

辛い思い?俺、つらかったんだっけ。
わかんないや。

それは、裕翔に聞いたのだろうか。
どこまで話しているのかは知らないが、山田に知られてしまったことよりも、握られた秘密をバラされた時点でやはり俺はもう裕翔の物ではなくなってしまったんだなとショックを受ける自分がいた。





「今は?何もされなかった?大丈夫?」





山田はゆっくりと体を離し、俺の顔を覗き込む。





「されてないよ」




山田に誤解されたくないと思って笑ってみたが、それが余計に不自然だったらしくそんな俺を見て山田は悲しそうな顔をして見せた。

そんな顔、しないでよ。

そんな山田の顔を見ていられなくて俺は目にしないで済むように再度彼に抱き着いた。
久しぶりの山田の匂い、山田の温もり、山田の優しさ、全てにドキドキしている自分に酷く悲しさを覚える。
裕翔に対して罪悪感を感じたところで、別に裕翔にとってはこんな俺の気持ちに何も思うことはないだろうけど。

もうぐちゃぐちゃだった。

山田にも迷惑はかけたくない。
なのに相変わらず、山田の優しさは俺を勘違いさせる。



.

46 in→←44 in



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (354 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
638人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あんこ(プロフ) - 時雨さん» 初めまして!コメントありがとうございます(´;ω;`)そして凄く嬉しいお言葉も……、ありがとうございます!!もうほんと私の性癖(?)でまくりの作品でしたが楽しんで頂けたのならとても嬉しいです!!引き続きよろしくお願い致しますー! (2017年11月16日 8時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。完結おめでとうございます! お疲れ様でした。あんこさんの文体というか、表現の仕方が私的どストライクで、この作品ほんとに大好きです!! 三人の設定もほんとに好きでした……素敵な作品をありがとうございました! (2017年11月14日 0時) (レス) id: dcd1a2d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - ノアさん» コメントありがとうございます(´;ω;`)もっとドキドキして貰えるような展開でいけるよう頑張りますので引き続きよろしくお願い致します!楽しみにして頂けて嬉しい限りです! (2017年10月23日 19時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。まさかの展開にドキドキしてますよ(^ω^)山田さんはどうなるのかな?とか楽しみに待ってます! (2017年10月23日 13時) (レス) id: ec3abc1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 泡雪さん» コメントありがとうございます(´;ω;`)他作品も読んで頂けたとは、大変嬉しいです!!応援のお言葉ありがとうございます!流れを止めないように頑張りますので引き続きよろしくお願い致します! (2017年10月21日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんこ | 作成日時:2017年10月7日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。