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「裕翔、今日も行っていい?」
撮影終わり、キョロキョロと楽屋を見渡せばもう彼の姿はなくて。
光に聞けば、さっき出てったよと言われたので上着も荷物もまとめて腕に抱えると俺は裕翔を追って急いで楽屋を出る。
扉をくぐればすぐにスラッと伸びた長身が目に入り、俺は間に合ったと安心すると共に彼に追いつこうと走り出し、彼の横に並ぶと先程の台詞を吐いた。
でも、口にしてからわかる、彼のいつもの雰囲気とは異なる違和感。
「いのちゃん……」
彼の呆れたような表情に身体がびくつくかせると間もなく裕翔に腕を強く引っ張られ、向かっていた出口とは逆方向へ無理矢理連れていかれる。
「ちょ、裕翔……!」
外でこんな事をされるのは初めてで、何か気に触る事を言ってしまったのだろうかと不安が頭をぐるぐる回る。
廊下の角を曲がる時、ふいに通りかかった山田と目が合った。
山田はこんな俺達を見て、驚いたようにその場に立ち止まる。
だけど裕翔の力は強く、彼にフォローも何も出来ないうちに俺は引きずられるようにして誰もいない空いた部屋へと連れ込まれた。
「もう俺のところ来なくていいよ」
「……え、?」
決して、聞こえなかった訳では無い。
だけど意表を突かれすぎて自然に声が出た。
その言葉と共に裕翔はゆっくりと俺の腕を離す。
「なん、で……俺は、俺、には裕翔が必要で……!!!」
本当に裕翔が離れていってしまう気がして俺は必死に裕翔の両腕を掴んだ。
だけど、それはするりと離され、「そういうのもういいから」と彼は目も合わせず首を横に振る。
待ってよ、
なんで、なんで、急に俺を捨てるの。
それでも俺が何も言わなければ、裕翔は態とらしく大きな溜息を零して鞄の中からあるものを取り出した。
「じゃあもう、こうすればいい?」
その手にはあの日が収められたディスク。
(そんな存在すら、俺は忘れてたよ……)
俺は脅されて裕翔に会いに行っていたい訳では無い。
確実に自分の意思でそこに足を運んでいた。
そう。裕翔に会いたくて。
俺を好きだと言ってくれる裕翔に俺を捧げたくて。
しかし裕翔はそのディスクを足元へ落とすと、それを叩き割るように何度も足で踏み始めた。
彼の足元で粉々になるあの忌まわしいはずの証拠。
あんなに残されたくなかった事実も、今は、裕翔と俺を繋ぎとめる為のモノが無くなっていくような切なさを感じた。
「もう、飽きちゃった」
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あんこ(プロフ) - 時雨さん» 初めまして!コメントありがとうございます(´;ω;`)そして凄く嬉しいお言葉も……、ありがとうございます!!もうほんと私の性癖(?)でまくりの作品でしたが楽しんで頂けたのならとても嬉しいです!!引き続きよろしくお願い致しますー! (2017年11月16日 8時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。完結おめでとうございます! お疲れ様でした。あんこさんの文体というか、表現の仕方が私的どストライクで、この作品ほんとに大好きです!! 三人の設定もほんとに好きでした……素敵な作品をありがとうございました! (2017年11月14日 0時) (レス) id: dcd1a2d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - ノアさん» コメントありがとうございます(´;ω;`)もっとドキドキして貰えるような展開でいけるよう頑張りますので引き続きよろしくお願い致します!楽しみにして頂けて嬉しい限りです! (2017年10月23日 19時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。まさかの展開にドキドキしてますよ(^ω^)山田さんはどうなるのかな?とか楽しみに待ってます! (2017年10月23日 13時) (レス) id: ec3abc1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 泡雪さん» コメントありがとうございます(´;ω;`)他作品も読んで頂けたとは、大変嬉しいです!!応援のお言葉ありがとうございます!流れを止めないように頑張りますので引き続きよろしくお願い致します! (2017年10月21日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんこ | 作成日時:2017年10月7日 0時