検索窓
今日:9 hit、昨日:9 hit、合計:213,043 hit

42 ym ページ42

.



「嫌がるいのちゃんを俺が無理矢理抱いたの」






裕翔の言葉に身体が力むのがわかる。
頭が、パニックでおかしくなりそうだ。
そんな話、伊野尾ちゃんの口から何も聞いていない。








「脅しのネタ作って、嫌がるいのちゃんを何度も抱いてる。痩せ細っていたり、最近傷付いていくいのちゃんの身体は、全部俺のせい。ヤマの所に足を運んでるみたいだったから、てっきり全部知ってると思ってたよ。」







この状況を少しでも整理しようとしているのに、裕翔は次々衝撃事実をネタばらしのように連ねる。
平然と告げる裕翔に反省している様子はなく、俺は理解が追いつかないまま、そんな彼にふつふつと怒りだけが込み上げた。





ふざけんなふざんけんなふざけんな、







「お前……!!!!」




ドンッ

衝動的に動いた俺の拳は、大きな声と共に裕翔の顔の真横の壁を殴った。
裕翔は驚くどころか、それを見てすんと澄ましたまま鼻で笑う。




「殴らないんだ」




「そんなことしたって、意味ねぇだろ…………」




「ヤマは、優しいね」





優しくなんて、ない。
その言葉が伊野尾ちゃんと重なって息が詰まった。
俺は裕翔を睨みあげ、じんじんと熱を持つ拳を降ろすとそのまま裕翔を置き去りにしてその場を早足に立ち去る。









反省の色もなく俺の大好きな人を傷つけたという裕翔に対し、やり場のない怒りが込み上げた。
ぎゅっと拳を握り締めれば、自分の握力で血流が止まってしまいそうだった。
何故、彼はその事実を俺に告げてきたのだろう。









(伊野尾ちゃん……)




裕翔の話がすべて本当で。
裕翔に受けた心の傷がきっかけで俺のところに来たとしたら。

じゃあ、男と遊んでいるといった彼の言葉は?
だって、ふらふら男と遊ぶ趣味がある男が、1人の男との間の出来事でそこまで精神的にズタズタになるのだろうか。

だけどそんなことより、そんな辛い状況だったのに何も知らず、俺も結局裕翔と同じく、彼に手を出してしまっていた罪悪感に心が苦しくなった。

伊野尾ちゃんは俺にどうして欲しかったのだろう。
俺に助けて欲しかったのだろうか。
なのに、俺はそれを読み取ることも出来ず自己欲望のために…?






伊野尾ちゃんは、今までどういう気持ちだった?






しかし、頭の整理が落ち着かない俺は、裕翔が見守るこの場所で今更なんて声を掛ければいいのかわからず、伊野尾ちゃんに問いただすことは出来なかった。


.

43 in→←41 yt



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (354 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
638人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あんこ(プロフ) - 時雨さん» 初めまして!コメントありがとうございます(´;ω;`)そして凄く嬉しいお言葉も……、ありがとうございます!!もうほんと私の性癖(?)でまくりの作品でしたが楽しんで頂けたのならとても嬉しいです!!引き続きよろしくお願い致しますー! (2017年11月16日 8時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。完結おめでとうございます! お疲れ様でした。あんこさんの文体というか、表現の仕方が私的どストライクで、この作品ほんとに大好きです!! 三人の設定もほんとに好きでした……素敵な作品をありがとうございました! (2017年11月14日 0時) (レス) id: dcd1a2d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - ノアさん» コメントありがとうございます(´;ω;`)もっとドキドキして貰えるような展開でいけるよう頑張りますので引き続きよろしくお願い致します!楽しみにして頂けて嬉しい限りです! (2017年10月23日 19時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 更新を楽しみにしてます。まさかの展開にドキドキしてますよ(^ω^)山田さんはどうなるのかな?とか楽しみに待ってます! (2017年10月23日 13時) (レス) id: ec3abc1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 泡雪さん» コメントありがとうございます(´;ω;`)他作品も読んで頂けたとは、大変嬉しいです!!応援のお言葉ありがとうございます!流れを止めないように頑張りますので引き続きよろしくお願い致します! (2017年10月21日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんこ | 作成日時:2017年10月7日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。