愛のカタチ ymin/ytin

21 ym ページ21

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初めて、この関係を止めたいと思った。
初めからこんな事するべきではなかったんだ。
こんな事なら、伊野尾ちゃんに触れたいけど触れられない、あの関係性のままでいればよかった。
スタート台にすら立てていない俺が、嫉妬しているやら悲しんでいるなんて知ったら、君は笑うだろうか。


「もう、やめよう」


伊野尾ちゃんには俺だけを見て、そしてずっとそばにいて欲しいって思ってしまうから。
こんな依存や束縛、伊野尾ちゃんには迷惑でしょ？
俺は、伊野尾ちゃんが求めるような男にはなれなかった。


「わかった。ごめんね」


素直に受け入れた彼の声は、少し震えている様に感じた。


本来伊野尾ちゃんにこんな事は止めさせなければならなかった。
もっと自分を大切にしなって。
だけど、自分の欲望を満たす為にその伊野尾ちゃんの趣味に乗っかったんだ。
結局は初めから今も、俺は自分の事しか考えていない。
寧ろ俺が、彼に特別な感情を抱いていなければ、彼の望むような関係性になれたのかもしれない。
だから結局はこの好きという感情が、やっぱり彼に迷惑しかかけないことをとても実感した。


「もう、終わりにしよう」


この関係も。
俺の伊野尾ちゃんへの気持ちも。

俺はまだ俯く伊野尾ちゃんの身体を支えるように肩を押さえると、ゆっくりソファから立たせてあげる。
そして俺が乱れさせたシャツのボタンを止め直しているとあの忌まわしい跡も段々とその姿を消した。


「……かえるね、」


伊野尾ちゃんはそう告げるとふらっと身体の向きを変え、玄関へと向かった。

つまらない男だと呆れられているのだろうか。
伊野尾ちゃんの声にはあからさまに覇気がなくなっていた。
当の俺は心のどこかで関係を終わらせると言えば、伊野尾ちゃんに引き止められると思っていたようで。
彼が素直に部屋から出ていこうという事に寂しさを感じていた。
どこまでも自分都合の考えなのか。
心の中で自分を嘲笑した。
寂しいなんて気持ち、共有することから間違っている。
これは俺だけの思い。

本当ならもうこんな遊びやめなと伝えたいが、自分が何度も彼を抱いてしまったことでもうそんなことを言える立場でもないし、俺は伊野尾ちゃんが出て行く姿をソファに座ったまま横目で見送った。
ただ、伊野尾ちゃんの足音が遠ざかっていくのを聞きながら、遠くでバタンと玄関のドアが閉まる音が聞こえた後も、好きになってごめんと何度も謝罪を重ねていた。


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