首輪が十六 ページ17
「手前! Aに何しやがる!」
倒れ込むAを介抱する中也。
「ちゅ、や、さま……。わたしは、だいじょぶ、ですから……」
嗚呼、何故そんな表情を中也に見せている?君は私だけのものなのに。何故?
怒りのあまり私は理性を失っていた。中也の不意打ちに気付かないくらいに、理性を失っていたのだ。
「っつ……」
「一寸頭冷やせ馬鹿野郎」
最後に見えたのは呆れた様な中也の顔と心配そうなAの顔。
「……A……」
愛しいAの名を呟いて、私の意識は闇へ沈んでいった。
目が覚めたとき、最初に視界に映ったのは真っ白な天井。すぐにポートマフィアの医務室だと分かった。
「んぅ……ごしゅじん、さま……」
其の声にはっと振り向けばAが私の手を握ったまま眠っていた。Aの頬には大きなガーゼが貼ってあって、罪悪感に苛まれる。其れを誤魔化す様にそっとAの頬を撫でた。
「んっ……」
「痛いかい? ごめんねA……」
「おぅ、起きたか太宰」
不快な声に医務室の扉の方をむけば、忌々しい蛞蝓が其処に立っていた。
「やあ中也。珍しいじゃないか、君が私の看病なんてさ」
「Aの手伝いだよ。つかそんな事云ってる場合じゃねェだろうが。Aに謝る練習でもしとけ馬鹿野郎」
「そうだねえ……。でも其れより先にする事がある、と思わないかい? 中也」
私の纏う雰囲気に気付いた中也が一歩下がって軽く構える。私が体術で中也に勝負を仕掛けるはずないのにね。ほんと、馬鹿な奴。
「中也、君私が出張してる間にAと食事に行ったそうじゃないか」
「嗚呼、そうだったな。かわいい部下を食事に誘って何が悪い」
「君本気で云ってるの? Aは中也直属の部下じゃないでしょう」
「嗚呼、違えなあ。だが手前関係で何時も謝りに来るのは彼奴でな、付き合いが長えんだよ」
だから中也の事も下の名前で呼んでいたのか。
「其れで人の女に手を出したの? 中也がそんなに女に飢えてるなんて知らなかったよ」
「あ? 手前の女ってのは何奴の事だ? 一週間前会食の最中に個室に入ってよろしくしてた女の事か? 其れとも一ヶ月前ホテルに手ェ繋いで入ってった女の事か?」
「何れも仕事の話だ。私の女はA一人だよ」
「そうかよ……。良かったじゃねェかA。手前のご主人さまはちゃあんと手前の事をコイビトだと思ってたみたいだぜ?」
其の言葉に振り向くとベッドから顔を上げたAが顔を真っ赤にして此方を見ていた。
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滓跂(プロフ) - 知りもせずに余計なことを言ってしまい、大変御迷惑を掛けました。御免なさいm(_ _)m (2017年8月12日 9時) (レス) id: 33d499f1b1 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - 滓跂さん» 小説の説明にも書きましたが、検索避けです。コメントありがとうございました。 (2017年8月12日 8時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
滓跂(プロフ) - あの、大宰さんじゃなくて太宰さんじゃないんですか? (2017年8月12日 7時) (レス) id: 33d499f1b1 (このIDを非表示/違反報告)
さらん(プロフ) - 私も主人公の過去編お願いします! (2017年7月30日 17時) (レス) id: 2cee163366 (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 主人公の過去編お願いしますm(_ _)m (2017年7月26日 18時) (レス) id: 2eda603fc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:徒長 | 作成日時:2017年7月8日 20時