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扉がパタリと音を立てて閉まった後にはもう、恐怖と静寂のみ残っていた。───────強い。その恐怖に敦は一歩後退る。
「大丈夫。あれを倒せばいいだけ」
「鏡花ちゃん…」
「貴方と私ならできる」
「…!判った!」
アンはモンゴメリの背後に浮かんでいる。モンゴメリは嗤って敦と鏡花を見た。
「一人お先に捕まえさせてもらったわ。さて、遊びましょ!ルールは簡単よ、その鍵をあちらの扉に挿せばお友達はみんな戻ってくるわ。でもアンに捕まったらあなたたちの負けね」
ポワ、と光を纏って鍵が現れた。敦は不思議そうに見たあと、手で掴んだ。
「準備はいいかしら?」
「ああ」
「それじゃ、スタート!」
アンがモンゴメリの前へ出た。二人は視線を交えて左右へ飛ぶ。どちらを追ってくるのかと思考を巡らせていたその時、敦の背後に大きな影が現れた。本能的に敦は遠くへ床を蹴る。振り返るとそこには、もう一体のアンが堂々と浮かんでいるのであった。
「なんで二体も!?」
「そちらが二人なのだから当たり前じゃなくて?二対一なんて、不公平よ」
「く…」
顔を歪める敦を他所に、鏡花が言葉を紡いだ。
「何体だろうと関係ない。ただ倒せばいい」
淡々と云う鏡花に心を決めたのだろう、敦は意思を宿した瞳でアンを睨んだ。それから二人は互いの目を見て頷いた。
鏡花は異能で夜叉白雪を呼び出す。そしてアンに飛び込んでいった。夜叉白雪は一体のアンを刀で突き刺し、壁に縫いつけた。鏡花自身も短刀を突き刺しアンの片腕を壁から離れられないようにする。
「早く!」
「わかった!」
鏡花がアンの動きを封じているうちに、敦は扉に鍵をさそうと駆けていく。これで終わりだと思ったとき、鍵がうねった。思考が混乱する。
「な!?」
「惜しいわね!いいとこまで来てたわ。…まあ、この鍵が使えるかは知らないけれど!」
敦を見るモンゴメリは、おぞましく嘲るような笑みをたたえていた。その気配に気圧され、敦は一歩退く。その後ろで鏡花と夜叉白雪がアンに押し切られそうになっていた。鏡花の額には汗が滲んでいる。
「…く」
「鏡花ちゃん…!!」
「あら、行かせないわよ?」
「!?ぐわあああ!!」
鏡花のもとへ走り出した瞬間、アンが夜叉白雪を押し切り敦の方へ。その勢いのまま、敦はアンに捕らえられてしまった。鏡花はアンで手一杯。どうすることもできない。
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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2019年6月8日 8時