貴方と永遠の世界線【文スト】【中原中也】 (ページ11)

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『過去が無意味とは云いませんが、変えられぬ過去より変えられる明日を見る方が意味があると思います。それに…』

「それに？」

『社長はむしろ、過去を清算したいのではないですか？』

口角を少しあげて、少し目を逸らして静かに云った。視界の中で社長の瞳が揺らいだのがわかった。…まあ、元のお話がわかってるから云えることなんだけれども。

「…判った。そこまで云うのなら良いだろう」

『ありがとうございます！』

喜びと安堵がつい表に出てしまい、声がうわずる。慌てて片手を口に添えて何も無かったように微笑を再び浮かべた。

『あの、停戦協定を結ぶ条件、云うなればお互いが裏切らないようにするための保険としてポートマフィアと探偵社で社員を一人交換するということになるんですが』

「構わん。その一人はまた後日決めよう」

『わかりました。私はこれで失礼します。今日はありがとうございました。これからよろしくお願いします』

「少し待て」

『何でしょうか』

社長室から出ようとしたとき、呼び止められて振り返った。社長の目と私の目が合う。平静を保てない気がして、少しだけ視線をずらした。

「今日の件、乱歩から既に聞いていた。そして私は元より、協定を結ぶ気だった」

『えっ！？』

予想もしなかった言葉に再び感情が表に出てしまった。
嘘でしょ乱歩さん、そこまでわかってしまうの？いや、それだけじゃない。社長も元から結ぶ気ならこの時間は一体何だったの！？私は緊張して損だったのかな…。でも結べたならいいか。

『因みに乱歩さんと社長以外にこれを知っている人は？』

「太宰、国木田、与謝野だ」

『なるほど…。ありがとうございます』

「これから世話になるぞ」

『こちらこそ』

…社長ってそんなふうに云うんだ。なんか、不思議な気分。
そのまま私は失礼しますと云って部屋を出た。扉を閉めて振り返ると、壁にもたれ掛かる太宰が居た。
何してるのこの人？というかさっきまで居なかったよね？

『太宰…？』

「お疲れ様、A」

『太宰もお疲れ様。さっきまで仕事してたの？』

「依頼があってね。敦くんと調査していたのだよ」

『それはいいことだね』

書類は全く手をつけないくせに何かと調査には出るなんてどういうことだろうか。それほど敦くんに思い入れがあるのか、それともただのお出かけだと思っているのか。
全くわからないが迷惑をかけてないといいな。…それは無理か。