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「首領」
「何だね?」
俺が呼びかけると首領は振り返った。それと同時にエリス嬢が部屋の隅へと走り去る。
「恐らく太宰ではないでしょうか」
「どういう意味かね」
「太宰はAを気に入っているようでしたし、Aも太宰と仲良くしています。太宰が匿おうとしてもおかしくは無いと思います」
「成程」
てをぽんと叩いた。部屋に合わない間抜けな音が薄く漂う。それも気にせず首領は続けた。
「…様子を見よう」
「!」
「不服かね?」
「…いえ」
「無理はしなくていい。私も早く取り戻したいとは思っている。でも」
そこで言葉が途切れた。首領が手元の端末を操作し、横浜の景色が消える。黒い壁に変り、部屋が暗くなる。
「Aくんが何か、やってくれそうな気がするのだよ」
「Aが、ですか?」
「ほとんど勘だけれどね。でもきっと、やってくれる。組織の為になる何かを」
「…判りました」
「済まないね」
「いえ」
首領は一瞬、悲しげな表情を見せた。しかしすぐにいつもの“首領”に戻る。
そして俺は、また執務室へ戻った。
・
Aside
むむむ…。浮かばない浮かばない!首領を動かし組織を動かし利益になる案が!というかそもそも私の頭脳じゃそんなもの考えつかないのでは?
考えれば考えるほど虚しくなってくる。いつも太宰を見てきた側だったけれど、実際そういう考える側になると途端に難しくなっていく。更に太宰の凄さを感じるよ…。
『はあ…』
太宰みたいに戦況を支配できるような案は出ない。もはやここまでかな…。嗚呼無理。
───────でもここで諦めて何かになるのか?そりゃあ首領が上手い案を出してくれるかもしれない。でもあの芥川くんの時みたいに個人の問題として処理されてしまったら?私の勝ち目はないだろう。
今まで考えつかなかった案が出ないか?刳くても何でもいい。太宰ほどでなくとも強い案を。
『Qくん!』
そうだ、Qくんだ。かなりの刳い札だけれども。
え?どうしたんだろう私。これ、いけるかもしれない。首領たちの許可が取れれば。嗚呼でもそれだけでいくのか…?否、いかせよう。Qくんを出すだけで組合と探偵社を繋げる作戦を。
『思い付いた!』
ぱっと表情が明るくなったのが自分でも判った。それに早くこの思いつきを動かしたくて。
……あれ、私らしくない。落ち着こう。
すると、落ち着いたノック音のあと、太宰がまたやってきた。
「ふふ、君にお使いだよ」
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九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす)(プロフ) - 謝花さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです!!頑張ります!(泣) (2019年4月9日 22時) (レス) id: a597ec67e5 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 中也さんカッコいい可愛い!更新頑張って下さい! (2019年4月9日 13時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす)(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます…!!!!初めてコメント頂けてうれしいです(泣)がんばります〜!! (2019年3月11日 16時) (レス) id: 382e747ebe (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 凄く好みです、更新頑張って下さい! (2019年3月10日 19時) (レス) id: 43e3ad1e0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2019年1月4日 18時