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お互いの気持ち ページ10

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すぅ、と深く息を吸った高校長は私を少し離して肩に置く手にグッと力を入れ、その双眸で射抜くように強く私の目を見る。急に緊張が襲ってきて、ワイシャツの下で背中を汗が伝った。

「……私は、自分の(不老長寿の)アリスでこの姿を保っているが、実際はもう六十を超えている。それに対して、君はまだ十五だ。君の未来をつまらないものにはしたくないと思っている。……思ってはいるが、君を想う気持ちにも嘘は吐けない」
「……え、」


私は何を言われているんだろう。

いや、理解出来ていないわけではないのだけれど、追い付かないのだ。私を想う気持ち? ……いや、どこかで分かってはいる。だってあからさまに他の人とは違う扱いを受けていたし、私を見る目も多分普通とは違ったから。だけど、これは。

「迷惑だったら断ってくれて構わない。ここから逃げてくれたって良い。しかしもしも君が同じ気持ちを抱いているのならば、この話を受けてくれないか」
「え、ちょ、あの」
「御天A」
「はい」

名前を呼ばれて、思わずすぐに反応して返事を返した。学生の性がこんなところで発揮されてしまうとは。だからと言って何があるわけでも無いけど。そんな私に少しだけ頰を緩ませた高校長は、それでも真剣な表情は変えずにゆっくりと口を開いた。


「ずっと君の傍に居たい。勿論君が十六になってからの話だが、私と婚姻を結んでくれないか」


……えっ?こ、こんいん……婚姻?婚姻って、け、結婚って事……? 完全に予想を飛び越えていて、最早私の頭の中はパニックだった。だって、交際しようとか、そういう感じの事を言われると思ってた。緊張の汗も驚きで吹っ飛んだわ……


「あ、あああの私、わ、私、や、あの、先生の事は好きです。私も好きなんです。でも、でもですよ、……えっ、い、いきなりその、結婚ですか……?」
「ああ」
「だってつまりそれって、私が16歳になるまでは、こ、婚約って事です、よね……?」
「そうだな」
「お、お付き合いとかではなく……?」
「すまない、そこまでは待てそうになかったものだから」


どうしたら良いのか分からない。多分、というか確実に、社会的・倫理的に考えたら、高校長の言葉は大変問題のある発言なのだろう。でも待てよ、と思考が自分を呼び止める。考えてみよう、先生の隣に別の女性がいたら? ……ダメ、嫌だ。すごく嫌。どうしよう、嫌だ。勝手に涙まで出てきてしまって、私は俯いてぐずぐずと鼻を鳴らした。




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リンゴ(プロフ) - この作品大好きです 更新頑張って下さい  (2018年6月29日 13時) (レス) id: d9cf275670 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まろん | 作成日時:2018年5月17日 17時

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