Lv32.もう一度観たいもの ページ34
『やっぱり…まだフラグ生きてたか…』
「…」
『相葉くんとのデートは今日でしょ？いよいよ迷いが出てきたんじゃない〜？』
「…」
『ちょっと、冗談だってば！Aが無事で居て何よりよ』
「…」
『はぁ…』
電話の向こう側で吐き出されたマコの溜め息は、私の耳にちゃんと届いていた。
『ごめん、怖い思いしたんだよね』
"ごめんね"とマコはもう一度私に謝った。けど、私が今無言でいるのはそれが理由じゃない。
『今日は待ちに待った相葉くんとのデートなんだから…パァっと楽しんできなよ』
「うん…そうなんだけど…」
心のどこかで、何かが引っかかっているような感覚に襲われていたからだ。
『なに、どうしたの？』
「んー…なんか、前ほどドキドキしてないんだよね…楽しみだけど」
『え…それって、』
「ん？」
『いや、何もない。もう何も言わない』
「マコ？」
『とりあえず行ってきな！そしたら多分…分かるんじゃないかな』
「…？」
言ってる意味がよく分からないけど…うん、今日は思いっきり楽しもう。
＊＊＊＊＊
「相葉くん、お待たせしました！」
「おはよ、Aちゃん」
やっぱり素敵だ。爽やかだ。まぶし過ぎる。
「おはようございます、今日はどこにお出かけしますか？」
「うんー…ちょっと、観たいものがあって」
「観たいもの？」
…はて。一体なんだろう。
この時間から考えて夜景じゃないだろうし…あ、寺？大仏？それとも…ダム、とか？
観たいものって何だろう……と、色々なスポットを頭に巡らせていたら、
「ついたよ、Aちゃん」
あっという間に現場に着いたみたいで
「え…ここ…」
その場所に、相葉くんとの初デートを思い出す。
「うん…映画。観ようと思って」
あの日と同じようにチケット売り場へ向かう。
そして、
「あれ、人気らしくてまだ放映されてるんだって」
相葉くんはあの日と同じ映画タイトルを指差した。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
