＊ ページ22
「もしかして振られた？」
「それに近い…かも…」
「どういう意味」
「キ…キス…してた…」
「誰と誰が」
「相葉くんと知らない女の子っ…それで私っ…」
「あぁ？なんか状況がよくわかんねぇな…」
それもそうだ。
だって二宮くんは私が相葉くんと花火大会に行ったと思っているはずだから。
なのに知らない女の子とキスしてたなんて。そんなシーン理解できる訳がない。
「その女の子ってなに、彼女？」
「ちがう…と思う」
そう思いたい。
「じゃあ…別にそこまで泣く必要ないじゃん」
「泣くよ！超泣くよ！」
「よくわかんねぇけどどうせ雅紀にはそんな気ないって。女の方が無理やり迫ったんでしょ」
「そうだとしてもっ…辛いの…！」
「だから泣くなって」
「二宮くんには分からないんだよ！好きな人が他の人とキスしてるとこを見た時の辛さなんかっ……」
打ち上がる花火の音に混じって、自分の荒々しい声が夜空に響き渡った。
すると二宮くんは、ふと無表情になって。そのままゆっくり俯くと地面に小さく声をこぼした。
「………わかるよ」
「え…？」
「"好きな人が他の人とキスしてるとこを見た時の辛さ"」
「…」
「俺も辛かったから。しかも２回経験してるからねその辛さ」
「そう…なんだ…。ごめんなさい」
もしかしたら彼の辛い過去を掘り返してしまったのかもしれない…と、私も同じように俯いて。
反省している間に涙はどんどん乾いてゆく。
こうなったら気を取り直して、辛い思いを経験した者同士楽しく花火の続きを見ようじゃないかと、二宮くんに声を掛けようとしたその時…
「…ねぇ」
二宮くんの手が、いちご飴を握っている私の手に被さって。
「本当にキスが苺より甘いのか…確かめてみる？」
小さな囁きが耳元に落ちた。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
