＊ ページ21
「何、その不思議そうな顔」
「だって…てっきり彼女と行ってるものだと思ってたから意外で…」
「悪いね独り身で。…でも、もし居たとしてもここで見てると思うよ」
確かに、あんな人混みの中で見るよりもこの縁側から見る方が静かで良いかもしれないな。
誰にも邪魔されない２人だけの空間…。
いいなぁ、こういうの。
できれば相葉くんと一緒に…って、だめだ。
今は忘れるの。じゃなきゃまた泣きそうになる。
「浴衣、自分で選んだの？」
「ん？あ、そう。自分で…」
「いいじゃん。似合ってるよ」
「…」
「なんだよ」
「いや、なんか二宮くんに褒められるとくすぐったいというかなんというか…」
「嬉しくない？」
「ううん嬉しい！嬉しいっ…！」
「ぷはっ」
「なんで笑うの！」
「いや？いちいち反応が面白いなーと思って」
こうして２人で笑い合っている間も、花火は次々と打ち上がって。
相葉くんは今頃あの子と見ているのだろうか。
そういえば…携帯のチェックしてないな。もしかしたら連絡が入ってるかもしれない。
けど、今は見ないでおこう…。
「それ…いちご飴？」
二宮くんは私の手元に視線を落とした。花火大会の会場からずっと握り締めていたようだ。
「あ…うん」
「なんで苺にしたの？」
「え？それは…」
二宮くんの表情を見る限り、おそらく彼はその理由を見破っている。ここで嘘をついても無駄だ。
「二宮くんが、キスは苺よりも甘いって言うから…それで………」
自分でも驚くくらい、"キス"というワードに胸が詰まりそうになって
「あれ……どうしよう…」
ずっと堪えていた涙が一気に溢れ出す。なのに、二宮くんは慌てる素振りもなく、
「もう……どうしたの」
そっと、私の顔を覗きこんできた。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
