＊ ページ18
「もう…そろそろ帰ろうかな」
１人で花火を見るのは寂しいし、さっさと家に帰って寝よう。お腹も良い具合に膨れてきている。
今日はもうこれで満足だ……っと？ん？
「あ…飴ちゃん忘れてた！」
二宮くんがこの前言っていた"女の子は飴が好き"発言。
どうせなら私もそんな女の子になってやろうじゃないかと、と屋台を探した。
「はーい、りんご飴いちご飴ぶどう飴いかがぁ〜」
もの凄くやる気のなさそうなおばちゃんの声を頼りに人混みを掻き分け、私はズラリと並んだ飴ちゃんの前までやってきた。
「いちご飴、ひとつ！」
やっぱりここはイチゴでしょう。
だって二宮くん曰く、"キスはイチゴより甘い"。
ていうことは、キスの次に甘いのは当然イチゴってことで。私は今日、くちびるが寂しい気分なのだ。
本当なら相葉くんから誘いのオッケーをもらって、花火を見て、告白して成就して、甘い甘いキスをする予定だったのに。
それが出来なかったのなら、代わりにこのいちご飴で紛らわそうじゃないかと。甘い甘いキスをこれで妄想してやろうじゃないかと。
そんな事を考えながらいちご飴の外袋に手を掛けた……その時、
「？」
巾着袋の中で携帯が鳴った。
メールのようだ。
「誰だろ……ぉおっ？」
送信相手が相葉くんだと分かった瞬間、私は思わず携帯を握り潰しそうになって。
≪Aちゃん、今お祭り来てたりする？≫
なんだか希望の光で包まれたようなメール内容に心臓は暴れ出す。
(落ち着け…落ち着け…まだ花火を一緒に見れると決まったわけじゃない)
とりあえず、今の状況を送ってみよう。
≪はい！今、お祭り楽しんでます！いちご飴食べようとしていたところです！≫
≪１人？もし良かったら少しだけでも会えないかなと思って≫
「…！」
な、なんという奇跡…。希望の光に包まれていたそれはまやかしではなかった。
今、確かに、相葉くんから"会えないか"とお誘いメールが来ているのだ。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
