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…が、しかし。
「おーおーおー！」
「きゃー！大量！！」
急に地面から湧き出てきたゾンビ群。
１体、２体とハンドガンで撃ち抜いていくが俺１人では到底処理しきれないほどの数が迫ってくる。
これはおそらく無限沸き…ストーリー上逃げ切るのが正しいと見た。
「たぶんここで戦っても意味は無い。逃げるぞ」
「ど、どこにぃ！」
「さっきのＢ地点。きっとそこで話が進むはず」
ゲームストーリーの展開を予想するのも楽しみの一つだった。
薄暗い廃墟でゾンビに追われながらＢ地点を目指す。くそー…なかなか暗くて見づらいな…。
「Ｂ地点？場所分かってる？一旦地図見たほうがいいんじゃない？」
「大丈夫。一回通った道だから覚えてる」
「おぉ！」
「見てろ…俺のマッピング能力が火を吹くぜ」
「カ、カッコイイ…！」
はらり…と指先からスナック菓子を落としたAに、俺は嫌な気はしなかった。
なんだよコイツ…なかなか良いリアクションくれるじゃねーか。
＊＊＊＊＊
「無事にっ…無事に逃げ切りましたね！」
Ｂ地点について映像がストーリーモードに切り替わった途端、Aはパチパチと手を鳴らした。
俺もコントローラーを一度床に置いて、手首のストレッチ。
戦うのは得意だが、追われることが苦手な俺は手に少し汗をかいていた。
「すごい、すごい！二宮くんってゲーム上手いんだね！良い逃げっぷり！」
「ははは…そりゃどーも」
「あぁ、私こういう風に過ごすのが夢だったんだー…」
「夢？」
「彼氏の隣でお菓子食べながらゲーム見るの！…あっ、彼氏っていうか、人の、ね？人の隣で！」
Aは顔を赤らめながら慌てて発言を訂正した。別にそこは彼氏のままでいいのに。
俺が何か勘違いするとでも思ってんのか？
"彼氏の隣でゲームを見る"
それがお前の確かな夢なんだろ。
………つぅかさ、
「だったら雅紀じゃなくて俺にすれば？」
「え？」
「うっそー」
「え？なに？何がうっそー？」
「もういいよバカ」
「なっ…バカとは…！」
「さ、続き行くよー」
くだらない冗談を言ってしまったと、５秒前の自分に激しく反省。
………ただ。
もしも俺とAが付き合ったら。
休日はこんな風にゲーム画面の前で笑いながら、時には驚きながら、もしくは涙を流しながら、
同じ時間を過ごすのかなー なんて、そんな妄想世界を脳内に描いてしまったことは…誰にも内緒だ。
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作者名：水兎
| 作成日時：2017年7月11日 16時
