6 ページ8
「わ〜……服どうしよう……」
鏡の前でファッションショーよろしくポーズを決めてみたり別の服を着たり。
可愛らしいデザインが施された時計は13時を過ぎている。
今日はついに誉と対面できる日なのだ。
15時に天鵞絨駅にという一方的に取り付けた約束に、自分が遅刻する訳にはいかないと責任を感じつつも唸り声をあげる。
Aは今の時間を示すそれを見てぎょっとした顔でもうこれでいいや、とコーデを決める。
慌ただしく用意を済ませ、カジュアルでありつつも大人っぽい服装に合うように意識をして化粧を施していく。
少し淡いピンクのリップを塗り終わり、ヘアスタイルも大人らしく、今日のコーデに合わせて、立ち上がって自分の姿を確認する。
少しポーズを決めたり、くるりと回ってみたり。些細な戯れが楽しく今自分がどれほど浮き足立っているのかが嫌でも分かってしまう。
恥ずかしくなってカーペットの上に座り込んだ。
「今日…会えるんだ……」
憧れの人に会える。その事実を噛み締めると背中から顔までの体温が熱くなるのを感じる。
これはもしや…。
Aはこの先を遮るように首を横に振る。
(あの人はあこがれの存在なんだ)
(だから、これは……*なんかじゃない)
スマートフォンで呟きアプリのタイムラインでの近況を指で追いながら頭の中で悶々と思考をこらしていると時間が経つのは早いものでもう14時に近い。
もうすぐ家を出なきゃ、そう思って小さなリュックを背負い玄関まで行く。
外に出る前にAはネットの海で呟いた。
『@xxxx 今からおでかけ!ドキドキする』
もちろん、自撮りも忘れない。
呟いてから早くも震えるスマートフォンも無視して家の扉を開けた。
62人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まそたろう | 作成日時:2017年10月7日 1時