今日も私は黄昏れる【誰ソ彼ホテル】 (ページ6)

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氷麗―6― ページ6

支「それでは、宿泊名簿にサインをお願い致します」

？「ち、ちょっと待って下さい！私泊まるつもりなんて……それに、お金もないし」

支「宿泊費用は頂いておりませんのでご安心を」

？「あ、そうなんだ。……分かりました、他に行く当てもないので泊まります」

『あら、結構素直ね。どっかの誰かとは大違い』

阿「慌てる方が普通だろ」

『でもこの子の方がよっぽど大人しいじゃない』

？「？私、めちゃくちゃ驚いてますよ？」

『そうだったの？顔色一つ変わらないから気付かなかった』

この子、見かけによらず案外肝が据わってる。おもしろい

支「ではこちらにサインを」

？「あ……名前、思い出せない……」

支「かしこまりました。自分のお名前をお忘れになっているお客様も少なくありませんので。それではお部屋にご案内致します。えっと……」

支配人が私とはるを見て、どちらに担当をお願いするか悩んでいる様子

私はすかさずはるを肘で小突く

『ここは阿鳥が』

支「じゃぁ阿鳥くん、担当よろしくね」

阿「はい。お客様の担当を勤めさせて頂く、私阿鳥と申します。それではこちらへどうぞ」

はるは無表情で意味深な目線だけ私に送るが、すぐに営業スマイルに切り替えた

さすが本職、板に付いている

＊

音子side

目が覚めてから不思議なことばかりだ

いきなりホテルが現れたかと思えば、意識不明だったはずの氷麗様がいたり、頭が燃えている男がいたり、高身長のイケメンがいたり

部屋に案内されている間、頭の中で整理してみるが……だめだ、分からないことが多すぎる

阿「こちらがお客様のお部屋でございます」

音「わぁ！雰囲気のあるお部屋ですね」

阿「ありがとうございます」

阿鳥さんに連れてこられた部屋は、レトロモダンと言えばいいのだろうか？

明治・大正時代を舞台にした映画を彷彿させられる

阿「このお部屋には、お客様の潜在的な記憶にまつわるものがあるはずです。それを手掛かりに、お客様の記憶を取り戻す事が出来るかもしれません」

音「記憶にまつわるものってなんですか？」

阿「一概にこれだと明言はできませんが、私の場合家族写真でした」

音「阿鳥さんも、あの……燃えた人がいうところの生死が定かじゃない魂なんですか？」

阿「はい。お恥ずかしながら、私が来た時はパニック状態でした」

すごく落ち着きのある人なのに、パニック状態になっている姿が想像できない