氷麗―49― ページ49
『この台本は、二人の思い出と言っていたわね』
キョ「高校の文化祭の出し物よ。私はこの舞台の本番で、徹さんが運命の相手だとわかったの」
徹「えぇ〜、そうだったのかい!?」
キョ「えぇ、本当の話よ」
『?主役のシンデレラを演じたのでしょう?』
徹「そうだよ!キョーコちゃんはシンデレラだった!」
音「徹様が演じたのは、農夫Aですね」
徹「そ、そうだよ。端役も端役で……」
『そこよ、そこ。おかしいじゃない』
キョ「何がおかしいって言うのよ」
『"シンデレラ"は、継母と義姉妹に虐げられていたシンデレラが、王子に見染められて玉の輿に乗る話でしょ?普通、シンデレラが運命を感じるのは農夫じゃなくて王子じゃない』
キョ「そ、それは……」
音「なるほど!」
そこで音子も気付いたのか、台本の役者一覧を見る
『ここにいるキョーコ様は、シンデレラを演じたキョーコ様じゃない』
キョ「!!」
徹「そんなはずはない!僕の記憶はあやふやだけれど、彼女は確かにシンデレラを演じてた!」
『だから、ここにいるキョーコ様はあなたの言う、シンデレラを演じたキョーコ様じゃないって言ってるじゃない』
徹「じゃぁ、誰だって言うのさ!彼女はキョーコちゃんじゃないか!」
『キョーコ様にペアリングの跡がない理由、手帳の予定が食い違う理由、そしてシンデレラで運命を感じた理由……その3つから考えるからして……』
キョ「違う……違うわ!」
キョーコ様は悲鳴のような声で否定する
私は構わず続けた
『この台本にあるシンデレラ、"松本今日子"さんが、徹様がお付き合いしていたキョーコ様でしょ?』
徹「そうだよぉ、これが僕のキョーコちゃんの名前だよぉ!」
『でも他に、同じように"キョーコ"と読める名前があるわ』
徹様に台本を渡すと、彼はまじまじと役者一覧を見た
徹「……橋本京子」
『その人の役柄は?』
徹「……農夫Aの……妻」
キョ「……」
『そういうことよ。シンデレラが農夫に運命を感じるなんておかしいじゃない。でも、夫婦役ならしっくりくるでしょ?』
キョ「うぅ……うぅ〜〜〜〜!!」
京子様は両手で顔を覆い苦悶の声を上げた
しばらくして、呻くのを止めた彼女は顔を上げる
覆われていた仮面はなくなっていた
キョ「……そうよ。思い出したくなかったのに……でも、思い出した」
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作者名:みかん | 作成日時:2019年2月5日 16時