氷麗―5― ページ5
阿「そもそも、丁寧なようで丁寧じゃないんだよ」
『はぁ?』
また始まった
はるが従業員として働くようになってから度々衝突している
阿「最後に"です"とか"ます"とか付ければいいってもんじゃないんだよ」
『意味わかんない』
阿「Aちゃんの言葉遣いは威圧的すぎる。あと雑」
『私のどこが雑なのよ!』
支「いや〜!阿鳥くんが入ってくれて本当に助かるよ!」
支配人は、はるが来てから毎日嬉しそうだ
なんとなくムカつく
支「暁さんを制御してくれるし(ボソッ」
『ちょっと!聞こえてんのよ!』
支「ほ、ほら、暁さん!お客様来るよ!;;」
怒りの矛先を向けられて慌てたのか、上手く話題を逸らされてしまった
私は次に言いかけた言葉をぐっと飲み込む
阿「ほら、また眉間に皺が寄ってる」
『分かってるわよ、私だってやればできるんだから』
玄関のドアが開く
私は一度目を瞑り、撮影時に入る感覚で自分にスイッチを入れる
『ようこそ、黄昏ホテルへ』
新しいお客様は、紫色の水玉模様のワンピースを着た少女だった
小柄で童顔とは言え、高校生くらいの年齢だろうか
自分の顔を保っているお客様は珍しいが……目が死んでる。大丈夫かしら
そしてずっと無表情だった少女が、第一声を上げた
?「
『久しぶりに聞いたわね、その名前』
"氷麗"とは、私のモデルの時の芸名
ここに来てからその名前を呼ばれるのは初めてで新鮮味を感じる
?「ま、まさか夢で氷麗様に会えるなんて……美しい……再現度高ぇ」
支「お客様、ここはあの世とこの世の狭間でございます」
?「……はい?」
支「私は当ホテルの支配人。そしてお客様は、ご自身が生きているか死んでいるか定かではない魂でいらっしゃいます」
?「え、何の話ですか?私はただ道に迷っていただけで……魂?あの世とこの世?……こんなの絶対夢だ」
支「夢ではございません」
?「本当にあの世とこの世の狭間ってヤツですか」
支「考えてもみてください。現実の世界に頭が燃えている男がいますか?」
自分で言うか、それ
と思ったけどここは黙っておくことにした
?「いないですね」
支「そういう事です」
?「どういう事だ」
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作者名:みかん | 作成日時:2019年2月5日 16時