氷麗―39― ページ39
支「あ、暁さ〜ん!」
食堂の給仕をしていると、私に向かってブンブンと手を振りながら支配人がやって来た
嫌な予感
『嫌』
支「えぇ!?僕まだ何も言ってないよ!?」
『なんか面倒事の気がしたのよ』
支「そう言わないでさぁ、新しいお客様がご到着したから、記憶を取り戻すお手伝いしてきてもらってもいいかな?」
『はぁ、分かったわよ』
支配人に言われた部屋へと向かう
中に入ると、今回の宿泊客と客室を見て呆気に取られていた
?「きゃ〜、見て見てトオルさん!オーシャンビューよ!」
?「海が見える窓辺に立っているキョーコちゃんは、まるでモデルさんみたいだよ」
キョ「やだぁ、もう!トオルさんったら!」
部屋にはバルコニーが出現していた
その先には見晴らしの良い海が見える
しかも、今回の宿泊客は2人組
それも、やたらめったらイチャイチャしたカップルの宿泊客
『あの、お客様』
キョ「あら、女給さん!いつの間に?ていうかあなた、モデルの氷麗!?」
ト「本当だ!本物の氷麗様だ!あ、でも……僕はキョーコちゃん一筋だからね」
キャ「トオルさん……!」
浮かれたカーニバルのような豪華な仮面がぶつかり合って、カツカツと音が鳴る
頬ずりをしているのだろう……たぶん
私の顔はさらに引きつる
ト「そうそう、僕が女給さんを呼んだんだよ」
キョ「何かあったかしら?」
ト「ほら僕たち、現世での記憶が曖昧じゃないか」
キョ「えぇ、そうね。恋人同士でラブラブだったって事しか覚えてないもの」
ト「ここの従業員さんは、僕たちの記憶をこの部屋から探す事が出来るらしい」
キョ「え〜恥ずかしい〜」
ト「大丈夫だよ。相手はプロなんだから!」
『えぇ、まぁ……』
そう言うと、カップルはまたイチャつき始めた
私は制止するように咳払いをする
『それでは、お部屋の中を拝見させていただきます』
キョ「じゃぁ、邪魔してもいけないから、私たちはホテルを探索しましょうよ」
ト「確かに雰囲気のあるホテルだもんね」
2人が腕を組みながら、寄り添って部屋を出て行くのを見届ける
私は出そうになった溜息をぐっと飲み込み、部屋を探索し始めた
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作者名:みかん | 作成日時:2019年2月5日 16時