氷麗―4― ページ4
家が隣同士なのも私が中学生までの話だったけど、父子家庭だった私は小さい頃はよくはるの家に預けられたりもした
引っ越してから会うのはこれが初めて
よりによってこんな辛気臭い場所で再会するなんて……
『テレビのニュースとかでやってなかった?私、刃物で重傷を負わされたのよ』
阿「めちゃくちゃ報道されてたよ……俺お見舞いにまで行ったんだよ」
『あら、そうだったの?ありがと』
阿「結局、家族以外は面会できないって言われて会えなかったけど」
なぜ私が報道されている自信があるかと言うと、現世にいたときモデルをやっていたからだ
10代〜20代にはかなり認知度も高かった方だと思う
『それで?はるはなんでここにいるのよ』
阿「それは……まだ思い出せないんだ」
『まぁ、ゆっくり探せばいいんじゃない?私はロビーに戻るけど、いつでも声かけてくれていいから』
そう言い残して私は身を翻し部屋を出た
それにしてもはるがここに来るなんて本当に驚いた
私としては久しぶりに会えて嬉しいし、しばらく退屈はしなさそうだけど……果たしてここでの再会を喜んでいいべきなのか
死んでなければいいけど……
*
阿「だめだ、俺……暇死にしそう」
『でしょうね』
はるがここへ来て3日経ったある日、ここでの暇すぎる生活にとうとう音を上げた
『むしろ3日も耐えたことに賞賛を与えるわよ』
ここには娯楽という娯楽がない
あってもビリヤードや麻雀くらい……電子機器が当たり前に普及している時代に育った私たちにとって、それは一種の拷問のようにさえ感じる
なにせここにいる限りお金は取られないにせよ、記憶を取り戻さない限り出られないに等しい、所謂缶詰状態
阿「俺も働く」
『はるならそう言うと思った』
阿「そもそも俺、ホテルマンが本職だし」
『そうだったの?言われてみれば確かに、見た目はちょっと派手だけどはるに向いてそうね』
阿「逆にAちゃんは接客業に向いてない……俺は知り合いだからいいけど、分からなかった時すごく威圧的で怖かったよ。いきなり怒鳴られるし」
『それははるがぎゃーぎゃー喚いてたからでしょ!仕方なくよ仕方なく』
阿「相変わらず、気が強いよなぁ」
これから待ち受ける怒涛の結末を、私たちはまだ知らない
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作者名:みかん | 作成日時:2019年2月5日 16時