氷麗―20― ページ20
音子が電話に出ようとするが、それよりも先にはるが受話器を取る
私は最初から取る気がなく、横目でもくもくと野菜炒めを頬張った
阿「お疲れ様です、厨房の阿鳥です」
話し方からして、相手は支配人ってところね
阿「お客様がいらっしゃったようです」
音「私もう休憩終わるんで、お迎えできますよ」
阿「そう?じゃぁよろしくね」
『頼むわね』
阿「Aちゃんも、休憩終わりだろ?;;」
『残念、私は午後休暇をもらってるからこれで終わり』
音「そんなことできるんですか?」
『この前の生き埋め騒ぎで、有給寄越せって言ったら素直に応じてくれたわよ』
音/阿/ル「(きっと支配人を脅したんだろうなぁ)」
『とにかく、さっさと行きなさいマヌケ1号』
音「はい!それではマヌケ1号、行って参ります!」
阿「俺が2号?;;」
『1号の方が良かったかしら』
阿「いや、1号は音子ちゃんに譲るよ」
ル「ちょっと、根に持たないでよ!」
*
音子side
ロビーに着くと、フロントには洋装姿の男が立っていた
支「塚原さん、お客様をお部屋へご案内して」
音「はい!」
見るからに仕立ての良さそうな洋装を身にまとった男が立っている
新たな客だろう、今回のお客さんの頭は巨大な花になっていた
この花……パンジーだっけ?
とりあえずパンジー頭と名付けよう
パンジー頭はあたりをきょろきょろしている
ここが何処だかわからないみたいで不安そうだ
音「ようこそ黄昏ホテルへ」
パ「よろしくお願いします」
音「どうぞこちらへ」
パ「何もわからずここに辿り着いてしまったのだけど……ここは一体どこなんだい?不思議な場所だね」
音「そう思いますよね」
部屋へ案内する途中、私はパンジー頭に現在の私たちの境遇やこの世界、そしてこのホテルについてをたどたどしい口調でかいつまんで説明した
よくよく考えれば、初めて私一人でお客さんをご案内している
上手く説明出来ているのか、若干不安になった
もし私の説明で理解してもらえなかったら、A先輩に泣きつこう……
すると、彼は少し考え込んでから口を開く
パ「そうか、僕は生きているかも死んでるかも分からない状態なんだね」
音「はい、その通りでございます」
理解してくれている!
頭のいいパンジー頭で良かったぁ
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作者名:みかん | 作成日時:2019年2月5日 16時