今日も私は黄昏れる【誰ソ彼ホテル】 (ページ13)

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氷麗―13― ページ13

音「支配人や瑪瑙さんって人間じゃないんですかね？」

ル「あの見た目で人間って言われても困るわよ」

音「でもお客様も見た感じ人間じゃないですよね」

ル「お客様は人間」

音「でも、203号室のお客様は頭がパチンコ玉みたいでしたよ？」

『誰ソ彼』

音「え？」

『"あなたは誰ですか？"って意味。黄昏の語源とも言われているわね。黄昏時って相手の顔が見えづらいでしょ？』

音「あー……たしかに」

『このホテルの目的はそれ。自分が誰かを思い出して行き先を思い出させる為に存在しているって支配人が言ってた』

なるほど……だから黄昏ホテルなんだな

『ここに来る人間は大概、自分が誰かすらも見失ってる。だから自分の顔もろくに形作れないのよ。203号室の客もパチンコ玉ってことは、きっと彼のアイデンティティがギャンブルってことなんじゃない？』

音「って事は待ってください。私も来た時は頭が変になってた可能性があるって事ですか!?」

『音子の場合は……ふふ、内緒』

音「えー!?教えてくださいよ！」

ル「はい、ハンバーグ出来たわよ。早く持って行って！」

音「はーい……」

私の頭、どうなっていたか聞きたかったのに……

煮え切らない気持ちで出来立てのハンバーグをトレーに乗せる

あとで阿鳥先輩にも聞いてみよう

音「お待たせいたし……ん？」

ギャンブラーの部屋に戻ってくると、なぜかギャンブラーが支配人の足にすがりついていた

ギャ「頼むよ、もう一勝負！もう半荘やろう！」

支「こ、困りますよお客様;;私どもも仕事がありますので……」

音「何かあったんですか？」

そう尋ねると、すすっと瑪瑙さんが寄ってきて耳打ちをしてくれる

瑪「気持ちよく勝たせたのがだめだったみたい。彼ったら味をしめちゃったのよ」

ははぁ、なるほど

A先輩が断った理由がなんとなく分かった

ギャ「いいだろ？別に賭け麻雀じゃないんだから！」

支「分かりました。あと一回だけですよ？;;」

阿「麻雀はその一回が長いのに……」

こうして大人たちは再び麻雀卓を囲み始めた

支配人は明らかに項垂れている。一体どれくらい負けたんだろう

ギャ「あんたらも接待麻雀はよしてくれよな」

瑪「聞いた？阿鳥くん」

阿「分かりました。本気を出します」

ギャ「そうそう、そうこなくっちゃ！」

瑪瑙さんと阿鳥先輩は顔を見合わせてニヤリと笑う

支配人と違って、二人は強そうだ