ななひら ページ8
-
｢俺、今日から弁当要らんから｣
それは、つい4時間前くらいのこと
いつも通り起きて、
いつも通りイヤホンを付け歩いて登校して、
いつも通り朝練で先に登校していたシャオロンに、
いつも通り私のと中身が同じお弁当箱を届けに行った、
全部、いつも通りだったはずだった。
なんで昨日のうちに言わないの？じゃあこのお弁当はどうすればいいの？今日のおかずはあんたの好きなやつなのに、なんて頭の中ではそんな言葉ばかりで埋め尽くされたけれど実際はなんで、の一言も出せなくて。
ひゅ、と喉の奥がしまった音がきっと私だけに聞こえた。
｢こはるちゃんがな、作ってくれてん！｣
｢良かったら一緒にお昼食べない？って昨日LINEが来てな〜｣
｢最近隣の席になったって言うたやん？こはるちゃん聞き上手でなあ、｣
｢あんな小柄で可愛らしくて控えめで、ってもう完璧やんな！｣
私が反応を示さないからかまたシャオロンがべらべらと喋り出す。心底嬉しそうな表情で話す彼とは裏腹に私の心はどんどん冷えていく。
彼の発する言葉一つ一つが胸に突き刺さって、
お前とは真逆やなってそう言われている気がしてしまう。
ただの私の被害妄想なだけだって分かってるけど、でもそう思ってしまうほど私は彼の言葉にショックを受けてしまったのだ。
日を増す事に彼の口から出ることが増えてきた彼女の名前に、
時おり見かける仲の良さそうな2人の姿に、
頬を赤らめ、熱の篭った瞳で彼を見つめるあの子の表情に、
それを満更でもなさそうに受ける彼の横顔に、
覚悟をしていたはずなのに。
｢そっかあ！やるじゃんシャオロンそんなのいつぶりよ？？｣
｢お前さり気なく煽っとるな？？｣
｢それもあの人気トップクラスのこはるちゃんでしょ？お相手が不人気さんで務まりますかあ？？｣
｢っはー！言ってくれるやん！しっかりエスコートしてきますう！｣
エスコートだって、そんな言葉にも反応してぐるぐるぐるぐる渦巻く嫉妬心、ああ一刻も早くここから立ち去りたい。
｢んじゃあお手並み拝見ですねえ！報告楽しみにしてるから！｣
んじゃ、とそう言ってくるりと背を向け、背中越しにひらひらと彼に手を振る。声は震えていない筈。泣き出してしまいそうな顔は見られていない筈。
ったく、じゃーなと返す言葉と共にパタパタと彼が教室に入って行く音がする。
｢お弁当、どうしようかなあ｣
ぽそりと呟いた言葉は廊下の喧騒に掻き消された、筈。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すず(プロフ) - 更新待っています！夢主さんもチーノも頑張って欲しい！ (2022年12月14日 23時) (
レス) @page23 id: aa81562ec0 (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - ちびごん1さん» ちびごん1さんコメントありがとうございます…！のろっのろ更新ですが気長にお待ちいただけると嬉しいです( ; ; ) (2020年11月4日 23時) (レス) id: 97d9ef33fd (このIDを非表示/違反報告)
ちびごん1 - 更新待ってます！夢主ちゃんがんばえ！！ (2020年10月8日 17時) (レス) id: 4fdb0260c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼風 | 作成日時：2018年6月1日 22時
