とおとあまりふたひら ページ13
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｢俺に弁当作って、かあ…｣
チーノとの放課後から丸一日経ち今は土曜の午後17時過ぎ。Aは自室のベッドの上でごろごろと転がりながら彼の言葉を反芻していた。
いつになく真剣な眼差しを向ける彼の瞳はどこか不安げに揺れていて思わず｢いいよ｣と答えていた。まあ作る量がいつもと変わらなくなるのでこちらとしても嬉しい申し出だったのだ。了承の返事を聞いた彼はぱぁっと顔を明るくし周りにぽぽぽっと花を咲かせる勢いで喜びを口にしていた。
今までも軽いおねだりは何度かあったがお弁当丸々なんて初めてだ、と彼女の頭の中で犬耳を生やしたチーノが尻尾をぶんぶん振っている。
そんな可愛い後輩らしい姿とは別に屋上の時にしろ放課後の時にしろ昨日の彼は私の心を見透かしているような言動をしていた。そんなに落ち込んでいたか？でも確かにシャオロンの言葉は応えたし…ロボロ達にも気を使わせちゃった…とまた自己嫌悪に陥る。
｢こはるちゃん、応援いったのかな｣
今日は彼の所属する野球部の練習試合だった筈だ。
一昨日いつも通り彼と帰り道を歩いていた時にスタメンに入れたといつになく喜んでいた姿が脳裏をよぎる。
あれだけ可愛い子に応援されたらシャオロンもいつもより頑張れるよなあ、差し入れなんかされちゃったりして、それにまた彼はにやにやしちゃったりして、と負の考えは止まらない。
その時かしゃん、と自転車を止める音がか細く耳を掠めた。
シャオロン、帰ってきたのかな
そろ〜っと窓の外を覗くと予想通りのシルエットが真隣の家に入っていくのが見えた。
だか視線の先の彼は肩が落ちており、思わずAは声をかけてしまいそうになる。どこか浮かない様子の彼の表情も夕暮れの影でますます暗く映り彼女の胸の内にもちくちくと針が刺さったような感覚が広がる。
その痛みは彼の努力を間近で見続けていた彼女の思いやりの証でもあった。
毎晩の走り込みと素振り、慢心することも飽くこともなく練習を続ける彼に彼女はいつの間にか恋心を抱くと同時に尊敬していた。
きっと彼は今日も一人で己のプレイを反省し、悶々と悔やみ、また練習に励むのだろう。
人一倍負けず嫌いな彼だからこんな所で止まる筈がないのもわかってる。本当に落ち込んだら隠さず頼りに来るのも知っている。
だからこそ
｢…負けないで、｣
誰よりも努力をし続ける彼がグラウンドで眩しいくらいに輝けるのを彼女は心から願うばかりでいる。
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すず(プロフ) - 更新待っています！夢主さんもチーノも頑張って欲しい！ (2022年12月14日 23時) (
レス) @page23 id: aa81562ec0 (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - ちびごん1さん» ちびごん1さんコメントありがとうございます…！のろっのろ更新ですが気長にお待ちいただけると嬉しいです( ; ; ) (2020年11月4日 23時) (レス) id: 97d9ef33fd (このIDを非表示/違反報告)
ちびごん1 - 更新待ってます！夢主ちゃんがんばえ！！ (2020年10月8日 17時) (レス) id: 4fdb0260c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼風 | 作成日時：2018年6月1日 22時
