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しばらく二人は攻防を続け、周りの人々はぎょっとした様子で(当然だ、ここは貴族の街なのだから)ながめていたが、二人のこぶしが丁度ぶつかったとき、それも終わった。
「あーあ、やっぱ強いなぁ……体術の方もまた上達してるし」
マルシャナがふてくされたように言う。
本人たちや、共にいた女性以外は互角に戦ってるように見えただろうが、実際はアイサの方が一歩上だった。
火を風で無効化されてしまうという属性の問題もあったかもしれないが。
「そう簡単に負けたくないからね」
「魔法だけなら完全に負けるな」
「マルシャは不器用だからねー、それにしても突然大声上げて突っ込んでくるとかやめてよ……」
アイサはため息をつく。
これから入寮するというのに、問題にでもなって合格を取り消されたらどうするんだ。
ちなみにマルシャとはマルシャナの愛称だ。
アイサが勝手に呼んでいるだけだが。
「うらやましいじゃん、私も行きたいし」
「あー、そりゃ悪かったと思うけどさ。マルシャの頭じゃ無理でしょ」
「んなことないよ!!」
なんて話ながらも移動していて、カテドラル学園の門の前まで来ていた。
ここで、二人とはしばらくお別れなんだ。
そう思うと、胸が締め付けられるような気がした。
「おー、でっかいな〜流石金持ち貴族」
「はい、イヤミ言わないのマルシャ」
「だって私らなんて自分たちで狩って食べるような生活なのにさ〜」
「それは職業柄仕方ない」
でも実際、この国は貴族と平民の貧富の差がひどく、重すぎる税や、その割に合わない平民への還元が、平民たちの貴族への反感をあおっている。
そもそも住む環境さえもが違うのだ。
この国には1つ、とても大きな山があり、神山なんて呼ばれている。
その山の中腹には境雲と呼ばれる雲が常に漂っており、そこには魔物が多く生息している。
しかし、そこから下には魔物が出現するが、そこから上にはぱったりと出現しないのだ。
それに加え、山の頂上だというのになぜか気候が安定している。
これらの条件から貴族たちは境雲の上に住み、平民は下へと追いやられていった。
この境雲の上が境上、下が境下と呼ばれている。
そんなこともあり、平民の怒りは限界に近かった。
最近では革命を起こそうとする動きもある。
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作者名:奏紗 | 作成日時:2014年5月10日 20時