06 ページ8
新聞を下げてAの様子を見る。綺麗な顔をこれでもかとこちらに近づけてくるので、ほんの少し照れた。
tn「顔近いぞ。ちょっと離れろ」
新聞ごとぐいと押せば、「そんなん見てる場合じゃないって！」とA。
「株価が下がった！？そんなのねー、これが解決してくれるんだってば！」
彼女が持ってるのは紙袋。
tn「…ゴミがどうしたって？」
「もう！ゴミじゃないって！これはお宝！というより、人類史に残る宝であり、レガシーみたいなもんよ！」
俺はAが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。整った顔は綺麗だし、甘い香りのする香水も自分好み。頭も悪くない、一緒にいて苦でもない。料理の好みも合うし、価値観も合う。
「これ、凄いの！」
ずいと目の前に出す紙袋。それを受け取り、中身を見た。中には林檎の芯。
それを見た時、俺はぞっとした。
「さっき、齧り後からゲノムを調べたんだけど、」
だから、その先を言わないでくれと願う。
「なんとこれ、禁断の果実よ」
Aのこと、好きやったのにな。
「イブのゲノムが…ヒトのゲノムが残ってたの！」
俺はAを殺さなあかんくなったやん。
***
tn「グルペンさーん、入るで」
gr「どうした？」
俺がさっきまでしていたみたいに、新聞を読んでるグルッペン。
tn「今日の出品物。一応見せておこうと思って」
まず石を置いた。
gr「これは？」
tn「叫びの山の石。耳にあててみ？自分の叫び声がするから」
それを片耳にあてて数秒後、ふっと鼻で笑って机に置く。
tn「それ一つで原子力発電機一機分のエネルギーがあんねんて」
gr「今日のお客様に政府関係者もおったな。そいつが良い値段で買ってくれるやろ。他には？」
高鳴る心臓を押さえながら、紙袋を差し出す。
gr「…なるほど…」
グルッペンは一言、そう言った。まるでその袋の中に何があるか分かっているように。目を薄くし、紙袋を空ける。その中から取り出したのは林檎の芯。
gr「禁断の果実、か…」
男の顔は今まで見た中でもひときわ輝いていた。それはまるで少年のように。もしくは、こんな表現もできるかもしれない。
tn「イブの唾液も、そこに含まれていたらしい」
恋をした、ただの雄のような。そんな表情を見せた。
gr「それで、これを知ってるのは？」
林檎の芯を紙袋に丁寧にしまったグルッペン。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Alex(プロフ) - 鷹尾さん» ありがとうございます！現在続編を書いてるところなので、お楽しみにお待ちくださいませ！今後とも引き続き宜しくお願いいたします！ (2019年8月8日 19時) (
レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - 十音さん» もちろんです！現在書いている続編では、エミさんとコネシマさんが登場してます！お楽しみに！ (2019年8月8日 19時) (レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
鷹尾(プロフ) - コメント失礼します！相変わらずAlexさんのまとまった綺麗な文章と、面白いストーリー性にはいつも感服させられます..今後のストーリーが楽しみです！これからも無理なく活動を続けて下さい！応援しております！ (2019年7月25日 6時) (レス) id: 1713adb778 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 続きはゾムさんとかオスマン先生とかも関わってくるんかな? 楽しみにしてます! (2019年7月23日 22時) (レス) id: c8ef4a1018 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - 夢愛-ゆあ-さん» ありがとうございます！私も書いていてとても楽しいです！今後もぜひご覧くださいませ！ (2019年7月22日 21時) (レス) id: 88753e3a2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Alex
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/xxdreamxxalex02/
作成日時：2019年7月22日 0時
