06 ページ6
自分が普段来るような所ではない。場違いだ。けど、誰かが背中を押してくれた。これはただの勘違いかもしれないし、もしかしたら本当に押されたのかも。でも、どうしても彼女の隣に並んで…格好いいと思われたい、なんてことは望んじゃいない。不自然でなければそれでいい。結局店員さんは俺の事情を知ってか知らずか、「あっちのマネキンの方が似合うと思いますよ」なんて笑顔を崩さず教えてくれた。八分丈のパンツは流行りだと教えてもらったので、とにかくそれを履いてみた。少しだけスースーする足元が本当にいいのかどうか分からないけど、これが流行りなんじゃ仕方ない。黒のパンツに無地のグレーのベストと、七分丈のワイシャツ。思い切って皮のベルトの時計を買ってみた。ストライプのシャツをパンツの中に入れたら、「それは出した方がお洒落ですよ」とアドバイスを受ける。普段絶対に身に着けないメッセンジャータイプの鞄を背中に背負って、鏡の前に立ってみたらまるで別人のようだった。強くなった気分、とでも言えばいいのだろうか。購入した服を袋の詰め込んでもらい、その足で髪を切りに行った。前髪を七三に分けて、無造作にしただけなのに印象が変わった。不自然じゃないだろうか。
今すぐにでもAさんに聞きたくなってしまった。
***
「今日はありがとうね」
彼女の最寄り駅から、家までの道。夜遅かったのもあり、送ると言ってみたらあっさり許可された。
eml「こちらこそ」
飲んだ場所は大学生が行くような、チェーン店の居酒屋。彼女は最初にビールを、自分もビールを。同じお通しを食べて、乾杯をして、他愛もない話をしていた。学校の前においしいレストランができたんだよ。学食の金曜日って正直外れちゃう？そんな学校の話から、彼女の家の話まで。犬を飼っていて、実家に帰ったら必ず散歩に行く。でも、二日目になると少し疲れて散歩コースの変更を余儀なくされるなんてことまで。俺は代わりに、近所のカフェの話をした。とても落ち着く、美味しいコーヒーを出してくれるお店の話。そこのマスターがとても素敵な紳士だと言うと、「会ってみたい」なんて言うから話のネタを変えざるをえなかった。会話が途切れて、焼き鳥を食べる。すると思い出したように、「そういえば、」とAさんが話を続ける。それに耳を傾けて、彼女の口から出てくる楽しい話を聞くのだ。それに対してつっこんだり、質問をしたり。
こんな日が毎日続けばいいのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Alex(プロフ) - ドナドナさん» ありがとうございます！アラルカァイがよく分かりませんが、喜んでくださって光栄です。お辛い経験されたんですね。心中お察しします。 (2020年4月19日 21時) (
レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
ドナドナ - この作品がすごすぎて、目から滝のようなアラルカァイが...夢主のお話が自分にそっくりで、なんとなく嬉しかったです。ありがとうございました。 (2020年4月19日 1時) (レス) id: e73edfc34e (このIDを非表示/違反報告)
きぃ(プロフ) - ｳｫｫｫｫｫｫｫｵｵｵｵｵﾝ!!!!!!(*ﾉД`*)･ﾟ･。 (2019年9月2日 2時) (レス) id: d9682ceb69 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - おつるさん» 涙ふきふき。そう思ってくださり、ありがとうございます！今度はうれしい涙が流れてしまうような話を考えます！ (2019年8月8日 19時) (レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - ぐろこさん» ご覧いただきありがとうございます！ちょっと悲しすぎましたね…次はほっこりエーミールを書いてみます！ (2019年8月8日 19時) (レス) id: 8d1909fe0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Alex
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/xxdreamxxalex02/
作成日時：2019年5月25日 14時
