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「ガキが調子にのんな。そんなんで逝けるかよ。」
先程まで寝ていたはずの彼はふらりと起き上がり、中腰状態の俺の肩を突き飛ばす。
予想もしていなかった出来事に俺は敷かれた布団に倒れ込んだ。
「イッ…は、はぁ?急になんですか伊野尾さ」
「また慧がやらかした面倒事かよ、くそだりぃ」
ボリボリと頭を掻きむしりながら俺に近づく伊野尾さん。
何かが変だ。
まだ確信はもてないが、この人は先程までの伊野尾さんとは別人のように思える。
「あのなクソガキ、覚えとけ。
こんなクスリで逝けるわけねぇだろアホか」
「ちょっと伊野尾さん!?
さっきからなんなんですか、アホとかクソとか…!」
「情弱なお子様に大人なオレが教えてやるよ。
オーバードーズをすりゃ、100%で病院行き。
そのまま胃の中クソみたいな液体で胃液すらなくなるってくらいまで、吐くまで、死んだ方がマシだって思うくらい洗浄されてオ・ワ・リ!
死ぬなら海飛び込むとか首吊るとか電車に飛び込むとか色々あんだろ。なんでこんな生ぬるいことしか思いつかないのかね」
「っ…そんなことしたら、人様に迷惑かかるでしょ…」
死ぬ時くらいは、母親や義兄のように人に迷惑をかけたくなかった。
これは俺が命を絶つ時に唯一設けたルールだ。
それを聞いた彼は拍子抜けしたような、間抜けな顔をして
「なんだそんなこと分かってんじゃねぇか。
だったら人様に迷惑かけないように生きてろよクソガキ」
そう言いバルコニーへ足を運んだ。
一気にまくし立てられ、頭に来た俺は咄嗟に反論しようとした。
けれど。
「は…?“生きてろ”?」
「なんだよ、変なこと言ったか?オレ」
あぁ、すごく変だな。今日1番に変だ。
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作者名:ALEN | 作成日時:2023年6月4日 16時