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夜も更け、彼の寝息がスースーと聞こえ始めてから俺は再び起きた。
逃げるなら今だ。
風呂で冷静になって考えた。
あの人は俺に何が出来る?
助けるっつっても、具体的には?
もしも親や兄と離れることが出来たとしても、その後の学校や進路は?俺の未来に希望は?
どうせ【親のいない学歴もないただのフリーターか身体を売るだけの存在】になるんだ。
そんな惰性のような人生を送るくらいなら、こんな命、
自らの手で終わらせてやる。
生まれた時から俺の人生はこうなるって決まってたんだ。
きっとそう。
カバンの中から先週薬局で買った風邪薬を取り出す。
一瞬、この人の家で死んでやろうかと思った。
助けたかったという偽善者の前で、助けられなかった事実を作って、今後俺みたいなやつを見かけても手を出せないように…って
でもここは賃貸だ。彼の持ち家なら兎も角、俺の知らないところにまで迷惑が被る。
「……つくづく面倒なやつだな、俺は。」
カバンを持って立ち上がったその時。
「ガキが調子にのんな。そんなんで逝けるかよ。」
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作者名:ALEN | 作成日時:2023年6月4日 16時