2BRO.〈言の絲〉

紅を掻き遊さむ０２(弟者) ページ2

彼女の場合は俺と違い、買い物帰りに1人歩いていた所を突然背後から何者かに口元を布で押さえられ、布に染み込んでいたであろう薬品を嗅いで気を失ってしまったらしい。
襲われたおおよその時間と場所を聞き、俺達がレストランに居た事を照らし合わせると、どうやら犯人は複数犯居るようだ。こんなにもピンポイントで狙われているとなると、兄者やおついちの所にも何かしらの攻撃がされていると考えた方が良いだろう。まぁ、仮に攻撃を受けていたとしても、あの2人ならなんとかなるだろうけど、問題は彼女達が巻き込まれている事だ。


「どこか具合が悪い所とか有りますか？気持ち悪いとか・・・」

一刻も早く脱出したいところだが、顔色が優れず額を押さえ続ける彼女に俺は失礼、と言って彼女の手を取り、ひっくり返して彼女の手首に自身の指先を当てて脈を取る。

「有難う、大丈夫よ。・・・優しいところも兄弟一緒ね」

静かに微笑む彼女に、俺は苦笑まじりに答えた。

「兄者が優しいのはAさんだけですよ。俺なんかいつも悪態吐かれてますもん」

「彼が天邪鬼なのは弟者君が1番よく分かってるでしょ？それにここだけの話、彼、私に会ったら必ず弟者君の話をするのよ。凄く楽しそうに、嬉しそうに。付き合う前からずっとよ」

そんな彼女の信じられないような言葉に、笑って俺の話をする兄者を想像してみるが、ニヒルに嘲笑っている顔しか浮かばない。・・・絶対俺の失敗話や恥ずかしい話をネタにしているに違いない。


「・・・想像出来ないっすね」

「それくらい弟思いなのよ。良い事じゃない。・・・有難う、話をして気が紛れたみたい。もう大丈夫よ」

「それは良かったです。脈も落ち着いてるから大丈夫だとは思いますが、此処を出たら一応病院で検査して下さい。・・・あの、こんな時に何ですけど、折角なんで1つ聞いても良いですか？」

彼女からそっと手を離し、話をして気が紛れるならと、俺は以前から聞いてみたかった疑問を投げ掛けてみた。


「何？」

「兄者とはそのー・・・長い付き合いなんですよね？俺が言うのも何ですけど、兄者って結構気難しいじゃないですか。その・・・長く付き合うコツみたいなのってあるんですか？」



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