想い草3(兄者・乙・弟者) ページ50
「び、びっくりした・・・」
未だにドキドキしている心臓を落ち着かせる為に私は煙草を深く吸った。吐いた紫煙を夜空へと溶かし、煙草の火種を携帯灰皿へと押し付けた。もう1本吸おうと箱の底を叩いて煙草を取り出して口に咥えてライターを探す。先程の苦労は何処へやら、直ぐにライターは見つかり煙草に火を灯す。それと同時に玄関のドアが勢いよく開いた。
「Aちゃーん！」
「今日は入れ替わり立ち代わりだなぁ」
苦笑する私に弟者は首を傾げながら私の横へとやって来た。
「ちょっと確認して欲しい所があったんだけど・・・ごめん、吸い始めだった？」
微笑んで答える私の手元の煙草を見た弟者が申し訳なさそうに謝った。
「ううん、2本目。今行くよ」
消そうと煙草の先を携帯灰皿に向けた私の手を弟者が慌てて制した。
「あ、いや、吸い終わってからで良いよ！急ぎじゃないし！」
「そう？」
再び口元へ煙草を持って行った私の様子を暫く見ていた弟者がじっと煙草を見つめて言った。
「・・・ねぇ、煙草って美味しい？」
「んー・・・味があるって訳じゃないから具体的にはアレだけど、美味しい・・・かな？」
「ふーん・・・」
そう言って尚も煙草を見つめる弟者に私は吸っていた煙草差し出した。
「一口吸ってみる？」
「え！良いの！？」
私が差し出した煙草を弟者は嬉しそうに受け取り、口元へと近付けた。
「いきなり深く吸うとむせるから軽くね」
そう言ったものの煙草を吸った事の無い人間がいきなり上手く吸えることもなく、案の定、弟者は物の見事にむせ返った。
「うぐっ、ゲホッ！ゲホッ！不味ぅ！」
「あはは、まぁ、そんな味だよ」
「うぇー、兄者とAちゃんこんなの吸ってんのー？」
笑う私に信じられないと言う顔で弟者は私に煙草を返した。そして何かを思い出したのか、服のポケットを漁り出した。
「そうだ、これあげる」
そう言って取り出したのは棒付きの赤色の飴だった。
「イチゴ味。絶対こっちの方が美味しいよ！」
「あら、有難う」
そう言って私は弟者から飴を受け取った。
「それに俺、煙草より甘い味でキスした・・・」
何かを言い掛けた弟者が慌てて口元を手で抑えた。
「え？何？」
「な、何でもない！それじゃあ先に戻ってるね！」
そう言って弟者は慌てて家の中へと戻って行った。
「今日は皆どうしたんだろう？」
いつもの彼等からは想像出来ない行動に私は1人、首を傾げて紫煙を潜らせた。
【END】
終わり
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アルバ - コメント有難うございます！殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです！また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (
レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アルバ | 作成日時：2018年6月19日 12時
