想い草(兄者・乙・弟者) ページ48
ーーー君から香る甘い紫煙ーーー
「ちょっと外出るね」
動画編集がひと段落ついたところで、私は部屋に居る彼等にそう言って休憩がてら煙草を吸いに家の外へと出た。長く椅子に座りパソコンの画面と向き合うのは疲れるが、時折こうして友人である彼等の動画編集を手伝うのは楽しい。
「んー・・・」
両腕を伸ばしてから私は箱から煙草を1本取り出し、口に咥えて火を点けた。ふうっと吸って吐いた紫煙が夜空へと消えて行く。
「あそこの映像はやっぱり使いたいなぁー・・・」
先程の編集画面を思い出し、独り言を呟きながら構図を練る。後でおついちと相談するかと思案していると玄関のドアが開く音がした。振り返ると煙草を咥えた兄者が此方へとやって来た。
「お疲れ様、兄者も休憩?」
「おぅ、Aが吸いに行ったから俺も休憩」
そう言って胸ポケットのワイシャツからジッポライターを取り出し、咥えていた煙草に火を点けた。
「相変わらずエグい煙草吸ってるね」
「煙草と言ったらこれくらいねぇとよ。Aのじゃ吸った気にならねぇ」
鼻で笑う兄者に、私は苦笑混じりに兄者の煙草に視線を向けた。
「身体に悪いよ?」
「うるせぇ、人の事言えねぇだろ」
「それもそうね」
兄者の悪態に納得しながら私は煙草の灰を携帯灰皿へと落とした。そんな私を横目に兄者は深く煙草を吸って紫煙を吐き出し、呟いた。
「・・・なぁ、A」
「何?」
「あー、その・・・今付き合ってる奴とか居るのか?」
兄者の突拍子もない質問に私は思わず驚きの声を上げた。
「え?何急に?」
「・・・ただの気まぐれだ。で、どうなんだよ」
私の言葉にぶっきらぼうに言いながら兄者は私に視線を向けた。
「どうって・・・居たら此処に来て動画編集手伝ってないでデートしてるよ」
「そうか」
そんな私の言葉にどこかホッとしたような笑みを浮かべた兄者が短く答えた。
「そう言う兄者はどうなのよ?」
「あ?俺の事は別にどうだっていいだろ?」
「良いじゃん聞いたって」
しつこく聞く私に観念したのか、兄者は深く煙草を吸って吐き、視線を夜空に向けながら言った。
「・・・好きな奴は居るよ」
「へぇー、気難しい兄者が好きになるなんてよっぽど魅力的な子なんだね」
「・・・凄ぇ鈍感だけどな。先戻るぞ」
そう言って兄者は吸い終わった煙草を携帯灰皿に落とし、足早に家の中へと戻って行った。
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時