初恋2(弟者) ページ11
「え、先輩!?こんにちは、お買い物ですか?」
「たまの休日の買い出し。こんな所で会うなんて奇遇だね」
慌てて笑顔で挨拶する彼女の様子からどうやら職場の先輩らしい事は分かった。しかし先輩と言う立場にしては妙に馴れ馴れしい男で、柔らかな物腰で話しをしているが何故か男の手が彼女の肩に置かれている。何だコイツ、馴れ馴れしくAに触りやがって・・・。
「ところでこちらは?Aちゃんの彼氏?」
ようやく俺に気が付いた様な素振りかつ挑発的な視線を此方へと送る男。明らかに敵意を向けている視線に俺も笑顔で睨み返す。
好きな気持ちは誰にも負けない
だからこそ誰にも触られたくない
落ち着かない気持ちが俺を掻き立てる
「あ、えーと、彼は・・・」
「どうも彼氏の弟者と申します。Aがいつもお世話になってます」
彼女が口を開く前に俺は今日1番の笑顔で応えた。2人とも驚いた顔をしていたが俺は構わず続ける。
「すみませんが食事の予約をしてあるので失礼します。行こう、A」
「え!?あ、ちょっ」
そう言って俺は慌てる彼女の手を取り、一礼してその場から足早に立ち去った。
「お、弟者っ」
手を引かれながら慌てた様子で俺の名を呼ぶ彼女の声でようやく我に返り、俺はその場で立ち止まって握っていた手を離した。
「ごめん!Aの先輩なのに、けどAに馴れ馴れしい感じが俺っ、凄く嫌でっ。でも彼氏って言うのは嘘にしたくないって言うかその・・・って何言ってんの俺!?と、兎に角、色々と本当にごめんっ!」
パニックになりあらぬ失言から羞恥が沸々と込み上げ、赤くなった頬を隠す様に俺はそのまま頭を下げた。嗚呼、穴があったら入りたい・・・。そんな俺に彼女は静かに笑い、さっきまで繋がっていた俺の手をそっと取ると自分の手を重ねた。
「ううん、嫌じゃない。寧ろ嬉しかった。あの先輩前からちょっと過度なスキンシップで困ってたの。それにね、彼氏って言ってくれて凄く嬉しくて私も嘘にして欲しくない。だからこの手、離さないで欲しいな」
その言葉に俺は慌てて顔を上げると、少し頬を染めた彼女が困った様に笑っていた。
「こんな俺で良いの?」
「弟者が良いの。もう、さっきの強気な弟者はどうしたのよ」
重なる手を握りしめ、俺は苦笑するしかなかった。
【END】
221人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時