*《2》 ページ42
耳や尻尾を触っているうちにアタリくんの中身はますます猫に近づいていってしまい、今ではもう完全に飼い猫のように私に懐いている。
現に彼はレトロゲームのコントローラを放ってしまい私に擦り寄ってじゃれついてくるくらいだ。
「あのアタリくん……ちょっとそろそろ……」
「ぁ……何でやめるの……?もっと遊んでくれよ……」
離れようとする私の腕をアタリくんの尻尾が巻きついて引き止める。
そしてそのまま抱き着き頬を擦り寄せてくるのだ。
確かに私は猫が好きだと言ったが、彼は猫ではなく人間なのである。
いくら猫の耳と尻尾が生えているからといっても、人間の男の子であるという事実に変わりはないのだ。
かわいい……とは思うが、このままでは不味い。色々と。
「ふへへ……Aさん……」
「こら、アタリくん」
「にゃあー」
「にゃあー、じゃないわ……って、ちょっと……!」
今度は私の首元を舐め始めた……。
今の私はアタリくんに全身をがっちりホールドされている為動けず、されるがままでいるしかない。
無理矢理起き上がる事も出来るのだが、はっきり言って可哀想だからそれは無しだ。ゲームでいう反則技だ。
……どちらかと言うと、今のアタリくんの行動が反則っぽいけど。
「ん……きもちい、もっと撫でて……」
「もう……」
アタリくんの毛並み(というか髪の流れ)に沿って撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細めて私を抱きしめる腕にきゅうっと力が入る。
いつもはこんなに甘えてこないのに、猫ってこんなに人懐っこかっただろうか……。
「んっ……Aさん……A、さんっ」
「あっ!?」
首元に痛みが走った。
アタリくんが噛んだからだ。
きっと無意識に噛んでしまったのだろうけど、猫と同じ尖った歯で噛みつかれたから、痛いしきっと血が出ているだろう。
「い……っ」
「……あ……ごめんなさい……!」
つい私が声を上げてしまうと、はっと目が覚めたかのように起き上がり、だけどもう一度縋るように抱き着いて私に許しを乞うた。
「あ、アタリくん……?」
「あっ、血出てる、おこられる、やだっ、おこらないで」
「アタリくん落ち着いてっ」
「やだ……Aさんおこらないでっ……ごめんなさい……っうぅ……」
許しを乞いながらも泣きそうになっている……。
猫になりかけて思考も単純になってしまっているのかしら。
アタリくんは何度も何度も謝りながら噛んでしまった所をちろちろと舐めてくる。
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レウィシア(プロフ) - セイラさん» コメントありがとうございます……そう言っていただけると私も幸いです(最敬礼) (2017年7月13日 0時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
セイラ(プロフ) - 続編も頑張って下さいませ! (2017年7月12日 21時) (レス) id: b537a2b254 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - お気に入りに追加人数が二桁を行きました……ありがとうございます(最敬礼) (2017年7月11日 17時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - 過去最高185位、2000hit達成、お気に入り追加人数8人、高評価……#コンパスの力は無限大ですね……!皆さんありがとうございます(最敬礼) (2017年7月10日 17時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
レウィシア(プロフ) - 響さん» コメントありがとうございます……これからもその最高を維持して行こうと思いますッ(最敬礼) (2017年7月10日 17時) (レス) id: b8b95089d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レウィシア | 作成日時:2017年7月2日 2時