第24話 ページ24
二日目も、キノは村に住む人々の生活や様子を遠く離れた所から観察していた。
何もない山間にいきなり少女がやって来たら、不審に思われるかもしれないと思ったからだ。
キノはため息をついた。
ーーどうしたものかなぁ……血の掟を守るって言っちゃったけど……適当に選んで致すとか……そんなことシたくない……。
考える度に、胃が痛んだ。
う〜んと悩みながら、森の中へと進んでいった。
適当にウロウロしながら彷徨うようにほっつき歩く。
すると、小さな湧き水の出る池を見つけた。
透き通った湧き水が、ボコボコと空気泡を出している。
色んな魚もいた。
丁度喉が乾いていたため、両手で水を掬って飲んだ。
冷たくてとても甘く、喉が一瞬でうるおっていく。
ここは陽当りが良いようで、水面に日差しが当たり、キラキラと輝いている、素敵な場所だった。
キノはそのまま座り込み、池の中を泳ぐ魚をじ〜っと見つめた。
ーー………魔力を持ってなくても、普通に生きている人もいる………。
キノは自分の右掌を見つめた。
ーー魔力なんてなくても……人は生きていける………。
キノの中で、ある考えが生まれようとしていた。
ーー……この力は………そんなに大事なの？
考えに集中していたせいで、キノは気づかなかった。
この場所に誰かが向かって来ていることに。
ガサガサッ！
『！？』
背後で草木を掻き分ける音がして、キノは勢いよく振り返った。
そこには、自分と同じぐらいの少女が桶を持って立っていた。
水を汲みに来たのだろう。
少女は少し驚いた顔でキノをガン見している。
「……あんた……誰？」
『え？』
声をかけられ、キノはハッとなった。
ーーしまった！透明魔法かけるの忘れてた！！
「見かけない子ね。何処から来たの？」
少女はキノをジロジロ見る。
『えとーーわ、私ーー』
キノは勢いよく立ち上がると、その場から立ち去ろうと駆け出した。
「待って！」
『！』
パシッと、少女に腕を掴まれてしまった。
「言いたくないなら何も聞かないわ。事情があるんでしょ？」
『………』
キノは返事の代わりに小さくコクッと頷いた。
「あたし、森を抜けたとこにある小さな村に住んでるの。あたしはローズ。よろしくね」
ローズは満面の笑みで言った。
赤毛色の女の子にはそばかすがあり、山育ち特有の日焼けをしていて、健康的ではつらつとした元気な可愛い女の子だった。
「……」
ーー彼女が……ローズ……。
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
