第47話 ページ47
『ズルいわ……ローズ……そんなふうに言われたら……断る理由なんて……ないじゃない……』
キノの目から涙が溢れた。
親友という言葉に弱かった。
その言葉を教えてくれたのは、目の前にいるローズだ。
「キノ……じゃあ……？」
涙をキュッと拭い、キノは真っ直ぐローズを見つめた。
『わかったわ、ローズ。私はここを出て行く』
「キノ……！」
ガバッとローズがまた抱き着いた。
『それでも私はローズが心配だってことをわかってほしいの！』
「勿論、わかってるわ」
『だから代わりにーーこれをあなたに託すわ』
キノは自分の首元から赫い石の首飾りを外し、ローズの首に付けた。
「これ……キノがずっと身に着けてたやつじゃない。大事な物なんじゃないの？」
ローズが手の平で赫い石を持ち上げ、じっと見つめた。
『だからこそよ。大切な人に、私の大事な物を託すんじゃない』
「キノ……」
ローズの目には再び涙が滲んだ。
「ありがとう……大事にするわ」
すると、キノは手を伸ばして赫い石を包み込みように握り締めた。
『赫い石よ、我の願いを叶えたまえ。どうかーーローズを守って！』
赫い石が光りを放つと、ローズが眩しそうに目を閉じた。
「ふ……不思議な石ね！」
『一応継承者は私なの』
「え？」
『ううん、何でもない！』
それから二人は泣いたり笑ったりしたのち、キノの部屋へ行き、キノの荷支度をした。
皆にここを出て行くことを告げたが、泣いてくれたのはルルだけだった。
ルイは驚くこともせず、ひとり娘の旅立ちに悲しむこともなく、淡々としていた。
「そう……頑張るんだよ。キノ」
『……はい。お父様……ローズを大事にしてください。娘のーー最後のお願いです』
キノは深々と頭を下げて言った。
ルイは無表情だったが、最後にニッコリ微笑んだ。
「わかった。約束するよ」
キノとローズとルルの3人だけで小高い丘で別れを偲んだ。
「お嬢様〜ルルは寂しゅうございます〜！いきなりなんなんでございますか〜！！」
ルルはずっと号泣していた。
『ごめんね、ルル。いきなり決めた私を許して』
キノはルルを抱き締めて言った。
「キノ……」
『ルル、ローズをお願いね』
「はい！勿論でございます。お嬢様！！」
「キノ……その……あたしから言っておいてあれなんだけど……辛かったら……戻ってきてね……」
『辛い思いして帰ってくるなんてできないわ』
「「え？」」
『自分の力でどこまでいけるか足掻いてみる！』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
