青く澄んでは (ページ7)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:5,911 hit

07 ページ7

.

『何か本当に申し訳ないです…』

電車に揺られながら小さく頭を下げる。

「ええよ。
1人にさせたら絶対迷子になっとったやろし」

『ここまできたら否定できません…』

事実、川上さんと一緒にいたはずなのに、一人で勝手に迷子になろうとしていた私。

本当に助かった…

「そういえばさ、」

『はい』

「今更やけど、何で東大に？」

前髪から覗く目が私を捉える。

あ、そっか、言ってなかった。

『大学の教授に行ってこいって言われまして』

「へえ」

掴んでいたつり革を握り直す。

『私卒業論文誰よりも早く出して解放されようと思って頑張って出したんですよ。
そしたらゼミの先生に、「これから暇だろう。知り合いの教授が実験参加者募ってるから、参加ついでに1ヶ月勉強してこい」って言われて』

「それで行かされたのが東大だったと」

『その通りです～。びっくりしましたよ、本当に』

あの時の衝撃は今でも忘れない。

え、先生ここに書いてある大学って、
ああ、東大だ。
いや、あの、何でよりによって日本一のとこなんですか。
知り合いがいるからな。
(そういうことを聞いてるんじゃないんだけど)

「頑張ってこいよ！」という先生の顔もしばらく忘れません。

『まあ、院進なので勉強するに越したことはないんですけどね』

「院進なん？学部は？」

『心理学部です』

「へえ、心理学か」

そう言って、電車の外を眺める川上さん。

夕焼けが差し込みピンク色の髪が更に赤みがかって見える。
綺麗だなあ。

「じゃあ、1ヶ月東大に通うんですか」

『そうですね、通います』

そう答えると、川上さんはにやりと笑って

「じゃあまた会えますね」

と言った。

さ、策士…！

.