32 ページ33
.
まさか今日来てくれるとは思わなかった。
数週間ぶりに見る米津さん。
前と変わらないようで少し変わった雰囲気。
ちょっと痩せた…?それだけ大変だったのかな。
ってだめだ、こんな見ちゃ…!
何か恥ずかしくなってきた。
「Aさん?」
『わっ!』
顔を覗き込まれて思わずびっくり。
『ご、ごめんなさい。えっと、その、』
「いやいや、こちらこそごめんね」
マスターはにやにやしながら奥へ行った。
あの人あれ癖なのかな…もう尚更恥ずかしくなる…!
でもせっかくくれたチャンスだもん。言わなきゃ。
『あの、米津さん』
「ん?」
いつもの席に座って携帯をいじりだした米津さんをじっと見る。
米津さんは返事をした後そっと携帯を置いた。
『ライブすごく楽しかったです…!ありがとうございました』
「そっか良かった。来てくれてありがとうね」
『そんなそんな!
何だか、全部、綺麗で…うわあなんて言えば良いんだろ…』
だめだ。
伝えたいことたくさんあったはずなのに、いざ本人を目の前にすると全部飛んだ。
自分の語彙力のなさを恨む…!
うーうー言いながら頭をひねっていると、「ふっ」と小さな笑い声が聞こえた。
「たくさん伝えようとしてくれてありがとう。
あなたが来てくれただけで嬉しいです。本当にありがとうね」
『っ…』
ず、ずるい、何だこの人。
思わず顔を背ける。顔が熱い。もうだめだ。
その様子を見てまた微笑む米津さん。
この人にはどこまでも勝てる気がしない。
…あ、そうだ、聞きたいことがあったんだ!
『あの米津さん、最後の曲選んだエピソードって…』
「ああ、うん、気付いた?」
『いやもう気付いたどころの話じゃないですよ!びっくりしました!』
「ははっ、なら良かった」
目を細くして笑う米津さん。
その様子はいたずらが成功して喜ぶ無邪気な少年のようで。
「招待したんだし、ちょっとサプライズを仕掛けたくてね。
上手くいって良かった」
『そんなの反則ですよ…』
「ん?何が?」
そう言って、にやっと唇の片端を上げる。
そんな米津さんに負けじと、私は頬を膨らませた。
「あはは、可愛いな」
『なっ…!!』
だめだ、やっぱり勝てる気がしません。
.
82人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひいろ(プロフ) - 碧穂(??)さん» ありがとうございます。この距離感が今後どうなるかお楽しみに…!また更新させていただきます。よろしくお願いします。 (2019年9月23日 15時) (レス) id: f379a93b96 (このIDを非表示/違反報告)
ひいろ(プロフ) - れいさん» ありがとうございます。また更新させていただきます。よろしくお願いします! (2019年9月23日 15時) (レス) id: f379a93b96 (このIDを非表示/違反報告)
碧穂(??)(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します。主人公と米津さんのやり取りや距離感が何だか可愛らしくて、とても好きなお話です(*´ω`*)更新されているところまで読み終えても読み返してしまいます…笑 いつもありがとうございます! (2019年8月20日 7時) (レス) id: deb8b25063 (このIDを非表示/違反報告)
れい - はじめまして!とても素敵なお話ですね。いつも楽しみにしてます! (2019年4月13日 17時) (レス) id: 51a47f014d (このIDを非表示/違反報告)
ひいろ(プロフ) - ゆかさん» そう言っていただけてありがたいです…!なるべく毎日多くの話数更新できるよう頑張ります。 (2019年3月4日 23時) (レス) id: f379a93b96 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひいろ | 作成日時:2019年1月1日 2時