今でもあなたは

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それから、米津さんは週に2度のペースでお店に来るようになった。




マスター曰く、前よりも来ることが増えたらしい。




それが何でかはわからないけど、私としては嬉しい限りだった。




そして今日も。




カランコロン






『米津さん、こんばんは』




「こんばんは」






大きな体を少し小さくして入ってきた米津さん。




その姿に思わず頬が緩む。






『いつもので良いですか？』




「うん」






携帯を触り始めた米津さんを横目に、いつものコーヒーを準備する。




今日はマスターが早めに上がったから、私が淹れたのを出すけど…緊張しますねやはり。






『はい、お待たせしました』




「ありがとう」




『今日マスターいないので、私が淹れたんですけど…お口に合わなかったらすいません』




「Aさんが淹れたの？」




『はい』






「そうなんだ」と言って、米津さんはカップに口をつけた。




本当に緊張します、やばい。




時間にしたら一瞬のはずなのに、すごく長く感じる。




カップから口を離す姿もゆっくりに見える。






「美味しいです」




『本当ですか！？ 良かったあ…』






ふう、と胸をなで下ろす私に、米津さんが小さく笑う。






「そんなに緊張してたの？」




『しますよそりゃ…！』




「じゃあ美味しいコーヒー淹れてくれたAさんにお礼」




『え？』







そう言って胸のポケットから出したのは、1枚の紙。






『これ、って…』




「わかった？」




『わ、わかったも何も、今度のライブのチケットじゃないですか…！』






そう。差し出されたのは今度あるライブのチケット。






『え、これを、私に？』




「うん」




『い、良いんですか、そんな…』




「俺がAさんに来てほしいなと思ったんですよ」






そんな殺し文句…！




受け取らない訳にはいかなくなってしまった。




自分で抽選で当てようと思っていたけれど…とんでもないプレゼントをもらってしまった…






『すいません、ありがとうございます』




「はい、どういたしまして」






これは、ライブまで何もかも頑張れる気がする。

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